園のたより(2023年度)

<卒園文集>
2024年3月19日
できるようになったよ
 2021年4月。コロナウイルスが蔓延(まんえん)し、マスク生活が続く中、みなさんは天使幼稚園に入園してきました。感染を予防するため多くの制約がある中での幼稚園生活のスタートになりました。お誕生会は大勢の人が集まるのを避けるため、誕生日の人だけ集まって、園長先生の「でかでか紙芝居」を見てもらいました。運動会は3クラスずつ2日に分けて開催。秋の遠足の代わりに「おむすびころりん」の人形劇の鑑賞教室を開きました。でも12月のクリスマス会は年少さん全員で「サラダでげんき」の劇をすることができました。

 年中さんになった時もまだコロナウイルスの流行は続いていましたが、先生たちは知恵を出し合いながら感染対策を講じ、遠足を再開するなど、前の年にできなかったことを少しずつできるようにした1年間でした。

 そのころのみなさんは、「ぼく4さい。」「わたしも、4さい。」と、よく自分の年を教えてくれました。また、「ねんちゅうさんだから、できるようになったよ。」と、年中さんになってからできるようになったことを、たくさん話してくれました。一人ひとりの成長の様子を見ても、できることがいっぱい増えていました。

 それから1年以上が経ち、みなさんができるようになったことは、もっともっと増えていますね。日本地図のおしごとが終わり世界地図に取り組んだ人。難しい折り紙がすいすいできるようになった人。鉄棒で前回りだけでなく、逆上がりもできるようになった人やボールを投げたり取ったりするのが上手になった人。また、自分でたくさんの本を読むことができるようになった人やお友だちがいっぱい増えた人……。この1年を振り返ってみると、できるようになったことがいっぱいいっぱい見つかるのではありませんか?

 4月からみなさんは1年生。幼稚園時代とは時間の使い方も、勉強への取り組み方も大きく変わります。さらに学年が進むにつれて、それまでは、新しいことに挑戦しても簡単にできていたことが、だんだんできるまでに時間がかかったり、できなくなったりする経験が増えていきます。
でも、簡単にできないことが増えてきた時こそが、みなさんにとって大きく成長するチャンスです。
「人間に必要なのは困ることだ。絶体絶命に追い込まれたときに出る力が本当の力です。」

これは本田技研工業の創立者、本田宗一郎さんのことばです。困難に出会ったとき、そこであきらめることなく、どうすればできるようになるかを考えたり、先生やお家の方、友だちに相談したりしながら、「絶対にできるようになるぞ。」という強い心を持って取り組むことを通して、困難を乗り越える力がついていきます。そして、その力が、みなさんがおとなになった時に役立つものです。

 マザー・テレサは、私たちに神さまからのメッセージを伝えてくれています。

「神様は私たちに、成功してほしいなんて思っていません。ただ、挑戦することを望んでいるだけよ。」

できるようになることではなく、できるようになるために挑戦すること、そして努力することこそ大切だという教えです。

 小学校に入ってから、そして中学校、高等学校、大学などに進む中、たくさん困難なことに出会っていくことでしょう。でも、そこで負けることなく、自分にはできるようになる力があるんだと自分を信じ、高い目標に向かって進むことを続けてみてください。

 「夢見ることができれば、それは実現できる。いつだって忘れないでいてほしい。」(ウォルト・ディズニー)
                  (園長 鬼木 昌之)
<園長だより「風」春休み月号>
2024年3月18日
ドラゴンボール
 『Dr.スランプ アラレちゃん』や『ドラゴンボール』の作者、鳥山明さんの突然の訃報に、国内からだけではなく、世界中から悲しみの声が届けられています。

 1980年に連載が始まり、1981年からアニメの放送が始まった『Dr.スランプ アラレちゃん』は、ペンギン村で繰り広げられる愉快なお話や、アラレちゃんやガッちゃん、村人たちのかわいくポップな姿が多くの人に受け入れられて大ヒットし、アラレちゃんの「んちゃ!」や「バイちゃ!」という挨拶は流行語になりました。

 『Dr.スランプ』に続いて1984年から連載が始まり、1986年からアニメの放送が始まった『ドラゴンボール』は、その後、世界的な大ヒット作品になりました。

 初期のドラゴンボールは、どちらかというと、Dr.スランプのスタイルを引き継いでいるようなコミカルな面がありました。ところが、鳥山明さんが「元々僕は、先の展開までジックリと考えるタイプではない。始まった時点では悟空が大猿に変身したり、サイヤ人という宇宙人だったというようなことは全然考えていなかった。先の話を考えずに行き当たりばったりで描くというのはけっこうスリルがあって悪くない。」と自ら語っているように、話の進展に伴い、その世界観がどんどん変化していきました。主人公の孫悟空の成長とともに、敵となるキャラクターもどんどん進化し、その物語や絵もシリアスなものに変化していきました。

 小さいころから強くなりたいという思いを持った悟空は、多くの人と関りを持ちながら修行に励み、いろいろな技を身に着けながら力をつけていきました。やがて、地球や宇宙を破壊するような強い敵が現れると、相手の力を上回ることができるようさらに腕をみがき、敵を打ち負かしました。その次に現れる敵は、前回の敵の力がひ弱に感じるほど強く、悟空はさらに新たな技を身に着け、さらにかつての敵が仲間となって協力しながら強力な敵を倒していきました。

 この物語の中で、読者は悟空という一人の少年の成長を、はらはら、わくわくしながら見守っていました。さらに作者の鳥山明さんが、先の展開を決めずに話を進めたことで、読者も次にどのような展開が待っているかを予想することができず、楽しみが増していきました。

 ドラゴンボールには「夢」や「冒険」、「挑戦」や「戦い」そして「友情」がたくさん盛り込まれています。そして、それはこれから育ちゆく子どもたちにとっても、大切なものです。ドラゴンボールのストーリーの先が決まっておらず、次の展開を見通すことができなかったように、子どもたちの未来も、多くの可能性を秘め、見通すことができません。だからこそ、悟空と同じように、逆境にめげず、勇気を持って立ち向かっていく力や、仲間を大切に思い手を携えながら共に成長していく心を、この物語を通して学ぶことができるのではないでしょうか。

 また、Dr.スランプのアラレちゃんは、いたずらっ子で失敗ばかりするけれど、みんなから愛され、かわいがられていました。それは、その行動が利己的ではなく、みんなと仲良く楽しく過ごしたいという思いから出ていたからでしょう。

 卒園する年長さんや、4月に進級する年中さんや年少さんにも、二人の主人公のように、困難なことに立ち向かいつつそれを乗り越える力や、周りの人々との関わりの中で、思いやりの心を持って互いに助け合う力を養っていってほしいと願っています。
                     (園長 鬼木 昌之)
<園長だより「風」2月号>
雛祭り/調べることの大切さ
2024年2月21日
 ♪明かりを つけましょ 雪洞(ぼんぼり)に♪
      (うれしい ひなまつり=サトウハチロー作詞:河村光陽作曲)
もうすぐ雛祭り。天使幼稚園でもホール前に雛人形を飾り、子どもたちも学年ごとにお雛様の制作をして雛祭りを迎える準備をしています。

 雛祭りは、平安時代に中国から伝わった五節句(1月7日の人日、3月3日の上巳、5月5日の端午、7月7日の七夕、9月9日の重陽)の一つ「上巳の節句」が起源となっています。「巳」は十二支の「蛇(へび)」のことで、蛇は脱皮を繰り返し成長することから、災いや穢れ(けがれ)を脱皮するように取り去り身を清める日とされていたそうです。この日は、水で体を清めて宴(うたげ)を催したり、紙でひとがた(人形)を作り、それに穢れを移して川に流したりしていました。

 また、平安時代には、お人形を使った「ひいな遊び」が貴族の女の子の間で盛んに行われていました。やがて、ひいな遊びのお人形とひとがたとが合わさり、流し雛となりました。

 江戸時代になり、人形を作る技術が高まって豪華な人形を作ることができるようになると、流し雛ではなく、女の子の健康を願って作ったお人形を飾るようになりました。こうして雛飾りが誕生し、雛祭りが女の子のお祝いになっていきました。

 雛人形の制作をしている子どもたちが、時々ホール前の雛飾りを見にきています。「あっ、おもちが ある。」「ももの はなが あった。」といろいろな発見をする一方、かごや牛車を指さして「これは なに?どうして かざってるの?」など疑問を持ち尋ねてきます。このように「なに?」「どうして?」という疑問を持つことが、子どもたちの成長にとって大切な、学びのきっかけになるものです。

 「雛祭りは桃の節句ともいって、ちょうどこのころ桃の花が咲き、桃には悪いものを追い払ってくれる力があると信じられていたから、桃を飾るようになったそうですよ。」「下の方の段には、お雛様のお嫁入りの道具の箪笥(たんす)や火鉢(ひばち)、そしてかごや牛車があるのですよ。」と、その場で教えてあげることで子どもたちの知識を広げてあげることができます。さらに、その子に調べる手段や力があるような時には、「図鑑や絵本で調べてみてごらん。」と、主体的に調べてみることを促すことで、その子の学ぶ力を高めていくことができるものです。

 ♪お内裏様と お雛さま 二人並んで すまし顔♪
ここに歌われている「内裏」とは、天皇が住み,儀式や執務などを行う宮殿のことで、お内裏様というのはもともと男雛、女雛二体を合わせた呼び名でした。ところがこの歌を通して、男雛を「お内裏様」女雛を「お雛様」と思って大きくなった人が増えてしまいました。

 雛飾りには「右近の橘」と「左近の桜」も飾られています。正面から見ると黄色い橘は左に、ピンクの桜は右に飾ってあります。「おや?左右が反対?」実は、この右・左は正面から見た位置ではなく、ひな飾りのモデルとなった天皇・皇后(お内裏様)から見て右・左を指しています。このように視点を変えると、見方がかわることや、歴史的な意味合いも、雛人形を通して学ぶことができます。

 ♪すこし 白酒召されたか 赤いお顔の 右大臣♪
右左の見方を知って雛飾りを見ると、赤い顔をしたお人形は向かって右に座し、こちらは左大臣だと分かります。作詞家の方の勘違いだったのでしょうか。さりげなく歌っている歌も、意味を考えながら確かめると、「本当は〇〇だ」と気付くことがたくさんあります。

 この他にも「雪洞って何、どうしてぼんぼりっていうの?」「菱餅は3色と5色があるけれど、どうして?」「三人官女は何をしているの?」など、好奇心を沸き立たせると、知りたいことや疑問が次々とでてくることでしょう。分からないことを見つけ出し、誰かに聞いたり自分で調べたりする。雛飾り一つからも学びを広げることができるものです。 
                 (園長 鬼木 昌之)
<園長だより「風」2月号>
みんなから愛される子に
2024年1月25日
 毎年1月に大田区私立幼稚園連合会の新年の集いが開かれ、そこでは区内の幼稚園に勤める先生の永年勤続表彰や、教養講演会が行われます。今年も1月17日(水)に開かれた集いに、天使幼稚園の先生も全員が参加しました。今年の教養講演会の講師は、武士道研究家の石川真理子先生で「女子の武士道」というテーマでお話をしてくださいました。「武士道」というと、堅苦しく厳しいという印象がありますが、石川先生は、人として成長していくための本質は何か、そしてそれを生かすためにはどうするべきかという、これから育ちゆく子どもたちにとって大切な教えを語ってくださいました。

 このお話の中で最も印象に残ったのは、石川先生がご自身の子育ての中で大切にしてきた「みんなから愛される子に育てたい。」という思いでした。子を持つ親として、その子が将来、どのように成長していくのかは、楽しみでもあり、心配でもあるものです。「幸せな人生を送ってほしい。」「人の役に立つ人になってほしい。」「自分らしく生きてほしい。」「賢く成長してほしい。」「スポーツや芸術の道を究めてほしい。」等々。それぞれの家庭の中で、いろいろな思いがある中で、「みんなから愛される人に。」という目標は、多くの保護者の方々の共通の思いにつながるのではないでしょうか。

 チャールズ・ディケンズが著した「クリスマス・キャロル」の主人公スクルージは、金儲け一筋に生きていましたが、ある年のクリスマスの夜、過去、現在、未来の精霊によって、自らの人生を見せられます。人々から厭(いと)われ、見捨てられた墓碑に刻まれた自分の名前を見せられたスクル―ジは、今までの人生観を改め、街の人々の中に飛び込んでいきます。このお話だけでなく、人は一人では生きていけず、多くの人々との交わりの中でこそ幸せに暮らしていけるという例は、枚挙に暇(いとま)がありません。「みんなから愛される」ことは、その人の人生の重要な要素となっています。

 石川先生は、そのために必要な子育てのポイントを六つ示してくださいました。

 一つ目は「礼」。挨拶ができるよう育てること。人と人とのつながりの中で、自分の心を開き、相手を大切に思いながら言葉を交わし合うことを通して、互いの心が通っていきます。二つ目は「義」。うそをつかないことや、正しいことを貫き通すことで、周りの人からの信頼も厚くなるものです。三つ目は「悌」。弱い者をいじめないこと。小さな人を思いやり、大切にしていくことを、日ごろから心掛けていくことが大切です。四番目は「勇」。自分から進んでできる意欲や積極性、勇気が求められています。五つ目は「孝」。目上の人に丁寧に接すること。現代社会ではみんな平等という発想で、目上の人にでも自分の意見をしっかり伝えることも大切だと教えられるようになりました。もちろん、それも大切なことですが、目上の人であろうが目下の人であろうが、相手の思いや考えを尊重し、より良い考えを生み出す努力が、人と人とのふれあいの中でとても大切です。そして六つ目が「恥」。これは、他人に見られて恥ずかしいということではなく、自分自身の心で自分を見た時、恥ずべきことをしていないかということが重要だということです。

 3学期の始業式の日に、子どもたちに三つのお願いをしました。それは「我慢すること・譲り合うこと・話し合うこと」の三つです。今、教育の世界では「主体性」を重んじることが大切にされています。ただ、それは自分がしたいことを自由気ままにするということではなく、主体的に自分を高める行動ができるようにすることです。また、自分がしたいことを我慢して相手に譲ることも大切になります。もし、目の前の子が、自由気ままにわがままを言っていたら、「みんなから愛される子ども」になっているでしょうか。自分を高めるためには、がまんをすることを含め、自ら困難なことに立ち向かうこと、そして、周りのおとなは、子どもがしたい放題にしていることを放置するのではなく、時には毅然(きぜん)としてやるべきことを教える姿勢がとても大切になります。

 「みんなから愛される子どもに育てる」ために、今、どのように子どもと向かい合うかが、問われています。
                   (園長 鬼木 昌之)
<園長だより「風」1月号>
辰 年
2024年1月9日
 2024(令和6)年「辰年」がスタートしました。「辰」という文字には「振=ふるう、ととのう」という意味があり、陽気が良くなって万物が振動し、草木が成長して形が整う状態を表すとされています。また辰年は動物では「竜:龍年」とされ、天空を飛び回り嵐を巻き起こす龍の姿から、勇ましさや躍動する年になるというイメージがあるようです。

 「振」「震」「唇」「農」などには「辰」が含まれています。「農」の文字も、「曲」の部分は「木木」が元になっていて、木が生えた大地を道具を使って耕す様子を表していて、これらの文字には「揺り動く」という意味が込められています。

 今年のお正月は「辰」ではなく「震」からの始まりになってしまいました。元日に起きた能登半島地震では多くの方が犠牲になり、まだまだ多くの方々が避難生活を送っています。2日には羽田空港で飛行機事故が起きました。「振興」の「振」ではなく、「地震」や「震えあがる」、「震」からのスタートです。亡くなられた方々のご冥福を祈りつつ、復興に向けてどんなお手伝いが出来るかを考えるお正月になりました。

 能登半島地震では津波が発生しました。地震直後のニュースでは、津波の映像はほとんど報道されませんでしたが、その後、北陸各地に大きな津波が到達していたという情報が伝えられています。しかし、東日本大震災の経験を生かし、一人ひとりが直ちに避難行動を行ったり、近所の住民同士が声をかけあって逃げたりしたおかげで、これまでのところ津波による被害者についての情報はなく、過去の経験を生かして身を守る行動ができていたようです。日航機の事故では、乗客乗員379人全員が無事に脱出することができました。その背景には、非常時でも落ち着いて行動することができるように、乗務員は非常時の脱出訓練を繰り返し行っていることが生かされ、また乗客も、乗務員との信頼関係の中、誘導の指示に従って行動し、無事避難できたそうです。このように、有事に備え、日ごろから対策を練ったり、訓練を重ねたりして、落ち着いて対処できる準備をしておくこと、そして信頼関係の中で行動することの必要性を、改めて認識することができた災害・事故でもありました。

 ところで、1月は英語で“January”和名は「睦月」です。January の語源は、2つの顔を持つローマ神話の「Janus(ヤヌス)」からきています。Janusは入口と出口を司る門の神ともいわれ、前年と今年の境を守っているそうです。「睦月」は、お正月に家族や親せきが集まり互いに睦み合うことから生まれました。Janus神のように、過去を振り返りつつ未来にその知恵を生かすこと、また、互いに睦み合い信頼しあって日々を生きること。そのことの大切さを教えてもらった1年のスタートの日々でもありました。

 令和6年は、平成が続いていれば36年、そして昭和でいうと99年になります。1923(大正12)年9月1日に発生した関東大震災直後に迎えた昭和元年。昭和は昭和恐慌から第2次世界大戦と多くの困難に見舞われる中スタートましたが、その後、戦後復興期から高度経済成長期を迎えるなど、大きく進歩していった時代でした。特にこの時代は、映画「ALWAYS 3丁目の夕日」に描かれているように、貧しいながらも暖かいふれあいがある中、未来を信じて生きていることができる時代でもありました。

 地震や事故から始まった2024年だけれど、人々が援け合い、大きく進歩した昭和のように、充実した年になっていきますようにと願ってやみません。
                        (園長 鬼木 昌之

<園長だより「風」7月号>
子どもたちの成長に向けて
2023年6月23日
 先週の土曜日は、父の日の集いにおいでくださりありがとうございました。4年ぶりの全園児一緒の父の日の集い。お父さんの手を引いて自分のクラスを教えてあげる子どもたちの顔は、嬉しさにあふれていました。ホールでの園長タイム。今年はビデオを通して1日の生活の様子を見ていただきました。日差しが強く暑い中の園庭での活動。「おっちょこたいそう」を一緒に踊り「おやこでびゅ~ん」では、飛行機やロケットをしてくださり、子どもたちは歓声をあげながら楽しんでいました。子どもたちにとっても思い出深い1日になったことと思います。

 父の日の集いのお話でも紹介したように、昨年度の目標「発見する喜び・成長する喜び」を土台としながら、「援け合い・学び合い」を目標に掲げた今年度。この目標に向けて職員で話し合いをしながらいろいろな活動に取り組んでいます。

 子どもたちが大好きな遊びのひとつに砂遊びがあります。天使幼稚園の砂場は、猫が入り込まないようにネットで囲んでいます。その入り口を開けるためには長くて重いバーを持ち上げなければいけなかったので、今年度この部分にカーテンレールをつけて簡単に開け閉めが出来るようにしました。そのおかげで、毎日砂場を開放することができるようになりました。また、天使幼稚園では砂遊びの時、服が汚れないように水は使わないというルールがあったのですが、今年からそれを無くし、水を使っても良いことにしました。すると、バケツで水汲みに行っているお友だちを助けに行ったり、「そこに水を入れて!」「もっとたくさん水を運ぼう」「もっと深く掘ろう」など声をかけあったりするなど、子どもたちが協力し合う姿が多く見られるようになりました。さらに、これまで草木は採らないという約束もあったのですが、採っても良い草や葉を教えることを通して、おままごとにいろいろな草木の葉っぱを取り入れ、遊びが発展する姿が見られました。初めは泥で服が汚れていた子も、だんだん汚さずに遊ぶことができるようになっています。ルールを無くし自由に遊ぶ環境を整えることを通して子どもたちの遊びが広がってきています。

 年少から年長まで、その年齢に応じて、折ったり、切ったり、貼ったり、描いたり、組み立てたりする力を育むことをねらいとした子どもたちの制作活動も、今年度大きく見直しました。これまでは、先生が準備した折り紙などを使って、指示に沿って一人ひとりが自分の作品を作ってきました。今年度は、制作のねらいはそのままにしつつ、子どもたちが話し合いをしながら共同で作品を作る活動を数多く取り入れています。今、各クラスに掲示している梅雨の風景も、年長さんと年中さんの共同制作です。年長さんが作ったあじさいに、年中さんが作ったかえるを組み合わせ、クラスごとに工夫して壁に飾りました。一人ひとりが作ったものを組み合わせることによって、さらに大きな作品になる楽しさを味わい、共同制作を繰り返す中、自分の意見を出したり、お友だちの意見を聞いたりすることを通して、コミュニケーション力や協働の素地を少しずつ身に着けることができています。また、年少さんもちょうちょの制作をする時に、紙の色を自分で選ぶことができるようにすると、自分のオリジナルのちょうちょができて喜んでいる姿もみられました。

 モンテッソーリ教育の面でも、今年度は今まで取り扱っていなかったおしごとを数多く提供し、子どもたちが取り組みたいと思うおしごとの幅を広げています。花の水替えも子どもたちが興味を示したので、毎週、新しい花を準備しています。自分でお世話した花が部屋を飾る様子を見て、子どもたちも喜びを感じているようです。花の水切り、ぜひお家でもさせてあげてください。

 この他にもこいのぼりの共同制作や、キュウリやトマト、ピーマンなどの栽培、さらにはお友だちが持ってきてくれた昆虫をクラスで飼う試みなど、折にふれて子どもたちの意見を取り入れる活動を数多く組んでいます。共に援け合い学び合いながら多くのことを発見し、成長していく喜びを感じてくれるよう、これからも環境を整えていきたいと思います。
                  (園長 鬼木 昌之)
<園長だより「風」6月号>
2023年5月25日
 東海道、中山道、日光街道……、江戸時代、各地を結ぶ多くの街道が整備され、たくさんの人が行き交い、人々のつながりが深まりました。近代になると全国に国道が張り巡らされ、今では高速道路網が整備されて遠い所まで短時間で移動できるようになりました。さらに町の中には、県道・市道・そして小さな路地に至るまで人々の生活に欠かせない道が存在しています。昔も今も道は人々の営みの中で重要な役割を担っています。

 「道」という字は、十字路と立ち止まる足とが元になってできた「しんにょう」に「首」が組み合わさってできています。古代の人々は、多くの人が行き交う道を通って異民族の邪霊(じゃれい)などが入り込むのではないかと恐れていました。その災いを避けるために異族の首を手に持ち、その呪(のろ)いの力で邪霊を祓(はら)い清めようとしたのが「道」という文字の起源といわれています。単純に人々が通るだけではなく、道を通って種々雑多なものが移動するという認識からこの文字ができているようです。

 フランスの詩人ジャン・ド・ラ・フォンテーヌは「すべての道はローマに通ず」という格言を残しました。古代ローマ時代、ヨーロッパ各地から異なる道を通ったとしても必ずローマに到達することができたということから、出発点や手段は違っていても目的が同じなら同じ場所や結論に達すること、あるいは、あらゆる物事は一つの真理から発していることのたとえとして用いられます。また、日本では「茶の湯」「剣術」「柔術」などでも、その技や精神を極めることを通して高みに至ることをめざし「茶道」「剣道」「柔道」という「道」が生まれました。このように「道」ということばは、人々が通る場所を示すだけではなく、人々の精神世界にまで入り込んでいます。

 「僕の前に道はない 僕の後ろに道は出来る」

高村光太郎(1883~1956)の「道程」という詩の一節です。自らの進む道は自分の力で切り拓いていく、その歩みが「人生」という一本の道となるのだという思いを表現しているとのこと。自分の人生は他の誰でもない、自らの力で歩んで行こうという気概(きがい)を示した詩になっています。

 「道」は聖書の中にも記されています。

「主はこう言われる。『さまざまな道に立って、眺めよ。昔からの道に問いかけてみよ。 どれが、幸いに至る道か、と。その道を歩み、魂に安らぎを得よ。』」(エレミヤ書6章16)

多くの道がある中で、自分はどのような道を歩いているのか、その道は正しい道なのかを振り返ってみようと呼びかけられています。

 さらにイエスさまは

「わたしは道であり、真理であり、命である。だれでもわたしによらないでは、父のみもとに行くことはできない。」(ヨハネ福音書14章6)

と、イエスさまの道を歩むようにと教えてくださいました。そのイエスさまの道は、「わたしがあなたがたを愛したように、あなたがたも互いに愛し合いなさい。」(ヨハネ福音書13章34)という教えに集約されています。

 みなさんが歩んできた跡にはどのような道ができているのでしょう。その道はローマ(真理)に真っすぐに向かっている道でしょうか。それともあちらこちらに寄り道しつつ、ローマへと向かっているのでしょうか。時には迷路に迷い込んでいる時もあったかもしれませんね。でも安心してください。すべての道はローマにつながっています。少々回り道をしても、目標を失わなければ必ずローマに至ることができます。また、これから作り出していく「僕の前に」できる道が向かう先にある目標(ローマ)は、しっかりと見えているでしょうか。

 ちょっと立ち止まって、みなさんが歩んできた道、そして、これから歩もうとする道について考えみると、何か新たな気づきがあるのではないでしょうか。
                   (園長 鬼木 昌之)

<園長だより「風」 5月号>
世界を広げる本とのふれあい
2023年4月25日

 年少さんは「赤バッジ」年中さんは「桃バッジ」年長さんは「青バッジ」。天使幼稚園では学年ごとにバッジの色が決まっています。学年が上がり桃バッジや青バッジをつけた子どもたちは、誇らしげに新しいバッジを見せてくれます。「わたし、あおバッジさんだから、あかバッジさんのおせわができるの。」と報告してくれることも。子どもたちにとって、バッジの色は、自分の成長を感じることができるツールになっています。

 年少さんや年中さんの頃、なかなか新しい友だちの中に入っていくことができていなかった子が、年長さんになると、小さな子に気を留めてお世話をする姿がみられるようになったり、年中さんの頃まで我慢をすることがあまり得意でなかった子が、「それはだめでしょう。」と声をかけると、すっとやめることができるようになったりと、本人はあまり意識していなくても大きく成長している様子が見られるようになります。

 3歳から4歳、4歳から5歳、そして5歳から6歳になる1年間の成長は、29歳から30歳になる大人と比べると比較にならないほど大きなものです。人生の1/6年と1/30年、数字を見てもその差は歴然としていますね。体も脳も著しく成長している子どもたちにとっての1年間はとっても大きなものです。

 その一方、まだまだ経験が少ない子どもたちですから、環境を整えずに過ごさせていると、身の回りのわずかな情報しか受け取ることができず、大きく成長するきっかけを失ってしまいます。子どもたちの可能性を伸ばすためには、子どもの周りの環境を整えることが大切です。

 今年の春、慶應義塾大学法学部に入学したことが話題になった芦田愛菜さんは「両親は、私が小さい時からすごく身近に本を置いてくれていました。そういう環境を作ってくれたことに感謝してます。本が好きになったのは、いつもたくさん読み聞かせしてくれていたことが大きいと思います」「小さい頃から両親がたくさん本を選んできてくれたので、読書はすごく身近な存在でした。歯磨きとか、お風呂とかと同じような感じ」と語っていました。芦田さんは自身の経験の中で、読書が自分を大きく育ててくれる礎になったと伝えてくれています。

 本や絵本の中にはいろいろな世界が詰まっています。また、人として大切にしなくてはいけない教えを伝えてくれるものもあります。小さい頃の本・絵本との出会いは、その子の世界を大きく広げてくれるものです。

 「うちの子はあまり本を読みたがらなくて……。」という声も時々聞くことがあります。そこで役に立つのが「読み聞かせ」です。なかなか本を読みたがらない子、絵本を手にしようとしない子も、お家の方とふれあうのは嬉しい時間です。子どもとのスキンシップを図りながら読み聞かせをすることを通して、子どもに本との出会いの場を提供することも一つの方法です。また、恐竜の本やキャラクターが載っている本しか見ないなど、読む本や絵本が偏っている子どもにも読み聞かせが役に立ちます。お子さんが好きな本を読みつつ、合わせてその子があまり関心を示さない本を1冊はさむことを通して、その子の体験の幅を増やしてあげることができるのです。子どもの欲求に沿いつつ、意図的に必要なものを組み込んで子どもの成長を導いていく、それが子育てや教育活動のポイントでもあります。

 ご自身の著書「まなの本棚」の中で、芦田愛菜さんは「小さい時に目にしていたものも少し成長してから読み返してみると、全然印象が変わっている―――。小さな子供向けと思われる絵本も、大きくなってから読み返すと『あれ、こういうことだったんだ!』って、以前は見落としていた教訓やキーワードに気づくことも多いんです。」と記しています。善い本や絵本には、子どもだけではなく大人にとっても大切なメッセージが込められているもの。お子さんと一緒に、ぜひ多くの本や絵本とふれあい、世界を広げていってみてください。
                         (園長 鬼木 昌之)
<園長だより「風」 4月号>
援け合い・学び合い
2023年4月7日
 4月(April:卯月=うづき)を迎えました。月の名前のエイプリル(April)は、ギリシャ神話の愛と美の女神である「アフロディテ(Aphrodite)」から来ているという説と、気候も暖かくなり草木が芽吹く季節であるため、ラテン語の「開く」を意味する「アペリレ(aperire)」から来ているという説があります。和名の卯月という呼び方は、旧暦の4月(今の暦では5月頃にあたります)には、卯の花(ウツギ=アジサイ科ウツギ属の落葉低木で5月頃小さな白い花をつける)が咲くから、あるいは稲を植える月である「植月」からという説があるそうです。どちらの呼び方にも、日に日に暖かさが増し、草木が生い茂る季節に向かっていくという意味が込められています。

 新年度を迎え、フランソワ・エンジェルクラスそして幼稚園で新しい生活が始まる子どもたちや、1年進級してお兄さんお姉さんになったという自覚をもって年中さんや年長さんになった子どもたちも、これから草木が芽吹きすくすく育っていくように、多くの体験を積みながら、ぐんぐん成長する日が訪れようとしています。

 昨年度は「発見する喜び・成長する喜び」を目標に掲げ、一人ひとりの子どもたちが主体的に学ぶことができるような場を設定してきました。子どもたちは新しい体験をすると「おや?」「なんだろう?」「どうなっているのかな?」「どうすればいいのかな?」という疑問を持ち、それを解決する方法を見出したり、分かったり、出来たりすることを通して、喜びを感じ成長していくものです。昨年度はその環境を設けることを意識しつつ保育に取り組んできました。

 今年度は、この目標を継続しつつ、さらに子どもたち同士の交わりの中で、互いに高め合っていくことができるように「援け合い・学び合い」を目標に掲げました。

 国際化や情報技術の発達、さらには気候変動などで激しく変化していくことが予想されるこれからの時代を生きていく子どもたちには、多くの知識を持つこと以上に、その知識を用いて問題を解決する力が求められています。また地球を取り巻く様々な課題を解決するためには、一人だけの力ではなく、仲間と援け合い、力を合わせることが大切になっていきます。

 4月の初めに、この目標を達成できるようにするために、どのように取り組んでいこうかと先生たちの話し合いを行いました。

 〇 多くの経験を積む場を設けてあげたい(絵の具・粘土・折り紙・音楽・リトミック……)
 〇 自由選択の場を増やしてはどうか(遊びや制作の内容・1日の時間の使い方を含めて)
 〇 外部の方に来ていただいて、体験の場を増やしてはどうか(ゲストティーチャー)
 〇 モンテッソーリのおしごとの提供をもっと増やして多くの中から選べるようにしてはどうか
 〇 自分で目標を持って取り組む場を作ってはどうか(例:地図のおしごと・鉄棒 など)
 〇 制作の中で、クラスや学年での共同制作を増やしてはどうか
 〇 ルールのある遊びを教え、ルールに沿って遊ぶ楽しさを体験させたい
 〇 ボールを使って一人で遊ぶのではなく、一つのボールを使ってみんなで遊ぶことの楽しさを味わわせてあげたい
 〇 どんぐりや木の葉などを、一人で集めるだけではなく、みんなで共有して何かを作るような活動をしてはどうか
 〇 みんなで作物や花などを育てる活動を取り入れてはどうか

等、たくさんのアイディアが出てきています。天使幼稚園創立75周年を終え、新しい伝統を作っていくためにも、積極的にいろいろな活動にチャレンジしていきたいと考えています。

 さらなる成長を目指す天使幼稚園。今年度も、どうぞよろしくお願いいたします。
                         (園長 鬼木 昌之)
<2022年度>5月号
こいのぼり
2022年4月26日
 5月といえば、ゴールデンウイークに子どもの日や母の日。五月(さつき)晴れに、田植えや八十八夜、そして茶摘み。若葉や菖蒲(しょうぶ)、春の薔薇(ばら)もこの季節です。暖かく青空が広がり、さわやかな日が多いのが5月の特徴です。

♪ 甍(いらか)の波と雲の波、重なる波の中空(なかぞら)を、
   橘(たちばな)かおる朝風に、高く泳ぐや、鯉のぼり。
  開ける広き其の口に、舟をも呑まん様(さま)見えて、
   ゆたかに振(ふる)う尾鰭(おひれ)には、物に動ぜぬ姿あり。
  百瀬(ももせ)の滝を登りなば、忽(たちま)ち竜(りゅう)になりぬべき、
   わが身に似よや男子(おのこご)と、空に躍(おど)るや鯉のぼり。(文部省唱歌)

 端午の節句の日を中心に、昔はあちらこちらに翻(ひるがえ)っていたこいのぼり。でも最近は街中でこいのぼりを見ることが少なくなってしまいました。子どもの日が近づくと時々流れてくるこの「こいのぼり」の歌も、今の子どもたちにとっては難解な歌になりました。

 歌いだしの「甍」は瓦葺(かわらぶき)の屋根のこと。ビルが増えた都会では瓦屋根が波のように重なる風景を見ることは、ほとんどできなくなりました。お雛様の時にも登場する「右近の橘、左近の桜」この橘も、最近では姿を見かけることはあまりありません。ミカンの仲間の橘の、さわやかな香りを知っている人も少なくなりました。3番に歌われている鯉が激しい流れの滝を登ると竜になるという、竜門の滝のお話。そこを突破すれば出世につながる難しい関門「登竜門」という言葉も、最近はあまり聞くことがなくなりつつあるようです。

 もうひとつ「こいのぼり」の歌があります。

♪ やねよりたかい こいのぼり おおきいまごいは おとうさん
 ちいさいひごいは こどもたち おもしろそうに およいでる
                      (作詞:近藤宮子/作曲:不明)

 何気なく歌っている歌ですが、この「真鯉(まごい)」「緋鯉(ひごい)」にも、時代の流れの中で変遷がありました。子どもの健やかな成長を願って揚げられるようになったこいのぼり、江戸時代は真鯉一匹だけだったそうです。明治になると赤い色の緋鯉を加え、お父さんの真鯉と子どもの緋鯉の親子のこいのぼりを揚げるようになりました。こいのぼりの歌もお父さんと子どもだけが登場しています。

 戦後の高度成長期になると、男女同権の精神も広がり、さらに多くの色のこいのぼりが加わって、黒はお父さん、赤がお母さん、そしてその下に多彩な色の子どもたちと、家族がそろったこいのぼりが泳ぐようになりました。

 しかし、都市の発展と共に、こいのぼりを揚げる場所がなくなり、大きなこいのぼりを見ることができるのは、田舎の方や、川の両岸からロープを伸ばしてたくさんのこいのぼりを吊るした場所、そして映像の中や本などに限られるようになってしまいました。

 4月号で紹介した今年度の目標「発見する喜び・成長する喜び」。そのきっかけを作るために、子どもたちが本物に触れる体験をすることも大切なポイントです。なかなか本物を見る機会がなくなった大きなこいのぼり。幸いなことに昨年度の卒園生から、大きなこいのぼりをいただくことができました。ただ、まっすぐなポールに縦に並べて揚げるだけの場所が幼稚園にもありません。そこで今回は屋上からロープを伸ばし、横に並んだこいのぼりが泳ぐように設置することにしました。

 大きなこいのぼりを見上げながら「こいのぼり」の歌の意味や、歌に込められた思いをお子さまにお話ししていただければと思います。
                   (園長 鬼木 昌之)
<2022年度>4月号
発見する喜び・成長する喜び
2022年4月8日

  3月21日の春分を過ぎて、昼間の時間が日に日に長くなってきました。そして4月5日には二十四節気のひとつ「清明(せいめい)」を迎えました。陽ざしが次第に強くなり、風にも清々(すがすが)しさを感じられるようになるこの季節にあてはまる「清浄明潔(しょうじょうめいけつ)」という語を略したものだそうです。この文字を見るだけでも、明るい希望が感じられますね。関東では桜はそろそろ終わりだけれど、幼稚園の花壇にはチューリプやムスカリ、マーガレットやキンセンカなどたくさんの花が咲き誇っています。

 一昨年の1月から広がり始めたコロナウイルス。その対策のためのマスク生活を始めてから、3回目の新年度です。まだまだ感染予防対策は必要だけれど、これまでの体験や知見をもとに、社会生活や幼稚園での活動などでは、できることは何かを見つけ出し、工夫しながら一歩を踏み出すことが必要な時期に入っています。「清明」に合わせ、明るい気持ちで1年をスタートしたいものです。

 わくわくドキドキしながら初めての幼稚園生活が始まる年少さん。新しい年少さんを迎えちょっぴりお兄さんお姉さんになった実感がわいている年中さん。そして最年長として小さい子たちのお世話をがんばるぞという希望に燃えている年長さん。そのような一人ひとりの力を大きく育てる1年とするために、今年度「発見する喜び・成長する喜び」を、天使幼稚園の目標として掲げました。

 まだまだ経験が少ない子どもたちにとって、身の回りの事象や体験の中には「新発見」がたくさん隠されています。「おや?」「なんだろう?」「どうなっているのかな?」「どうすればいいのかな?」など、子ども自身の興味関心や気付きをきっかけに、自ら課題を見つけ解決しようとすることを通して、学びの基礎を養っていくことができるものです。

 そのためには子どもたちの周りの環境を整えていくことが大人に求められています。いつもとは異なる状況を作り出してみたり、本物を観る場を準備したりすることも大切です。さらに、子どもが発見する喜びを感じる前に、周りの大人が今まで何気なく見ていたことの中に新たな発見をし、感動する姿勢も求められています。

 子どもたちと一緒に過ごしていると「ねえ、見て、見て。」とできるようになったことを嬉しそうに報告してくれることが数多くあります。子どもたちにとって何かができるようになることは、とても嬉しいことであり、それが一人ひとりの成長の喜びに結びついていくものです。

 子どもが「見て、見て。」と言ってきた時大切なことは、その思いを共有してあげること、すなわちほめてあげることです。子どものほめ方には3つのステップがあります。第1段階は「なんでもほめる」。一人ひとりが大切にされていることを実感できるよう「あなたが大好きだよ。」という思いを伝える段階です。第2段階は、できたことをほめる段階です。子ども自身が得意なことや、今までできなかったことができるようになった時、しっかりとほめて、その結果を認めてあげる段階です。そして3段階が「がんばった姿をほめる」段階です。子どもたちは日々、何かに挑戦し、成長しようとしています。それができるようになった時「見て、見て」と喜んで報告に来てくれます。ただ大切なのはそこでできたことだけではなく、できるようになった背景、努力の跡をほめてあげることや、まだできていなくても、できるよう努力している姿を認めてあげることです。たとえまだできなくても、その努力する姿をほめることを通して、子どもたちは自ら高まっていこうという「学ぶ力」を持つことができるものです。

 子どもたちが、たくさんの「喜び」を感じながら、日々成長していくことができるよう、幼稚園でも保育の充実を図って参ります。ご家庭でも子どもたちの「発見する喜び・成長する喜び」をたくさん見つけてあげてください。

 今年度もどうぞ、よろしくお願いいたします。 
                   (園長 鬼木 昌之)
<2021年度>5月号
5月は聖母月
2021年4月26日
 5月といえば端午の節句、こどもの日、こいのぼりや武者人形。ゴールデンウイークに立夏(今年は5月5日)。さらに八十八夜に茶摘みや田植え。また、躑躅(つつじ)や藤そして薔薇(ばら)、最近はあまり見かけなくなったけれど蓮華草(れんげそう)等の花々が美しい姿を見せてくれます。気温の変化が激しい春の終わりから、気持ちが良い初夏の陽気に変わっていくのがこの5月です。

 5月の清々(すがすが)しい晴れの日は「五月(さつき)晴れ」。もともとは旧暦の5月(新暦の6月頃)の梅雨の合間の晴れの日を「五月晴れ」と言っていましたが、最近では新暦の5月の気持ちが良い晴れの日も「五月晴れ」と呼ばれるようになりました。

 カトリック教会では、この5月を「聖母月」と呼び、マリアさまの優しさや神さまにしたがう従順な心を思い起こしたり、感謝の祈りを捧げたりする月になっています。その起源として、ヨーロッパでも多くの花が咲き乱れ新緑が美しい5月は、マリアさまに捧げる良い月ということから「聖母月」となったという説や、「メイ・クイーン」を選ぶ習慣から「その中でも最も美しいのはマリアさま」ということで5月が「聖母月」になったという説などがあるそうです。

 子どもたちは毎日、朝の祈りの後、園のことばを唱えています。

 イエスさまのように かみさまに したがう よいこども
      マリアさまに ならって やさしい こころ
       いつも なかよく あかるい こども
     きれいな はなを てんしの そので さかせましょう(天使幼稚園 園のことば)

 明るく元気いっぱい幼稚園生活を楽しみながら、善い行いができるようにイエスさまのことば(=神さまの願い)を思い起こし、優しいマリアさまのように、自分もみんなに優しくできる人になろうという幼稚園のめあてを繰り返し確かめています。

 家族という小さな社会から、同じ年代の友だちや先生と一緒に過ごす大きな社会の中に飛び込んだ子どもたち。自分の思い通りにはできない時があることや、自分と異なる思いを持っている人がいること、さらに共に過ごす小さい子を助けてあげたいという気持ちが沸き上がること等、人とのつながりの中で多くのことを学びながら成長していきます。

 新年度がスタートして1ヶ月。新しいクラスにも慣れ、そろそろ自己主張も強く出るようになっていきます。こうして迎える聖母月。小さな子どもたちだけれど、何でも「自分・自分」ではなく、「マリアさまに ならって やさしい こころ」を意識し、周りの人にも心を配りながら過ごしてほしいと願っています。

 新型コロナウイルスの感染拡大のため、また緊急事態宣言が出されました。不自由な生活のためストレスがたまり、物を壊したり誰かを攻撃したりというニュースも数多く耳にします。こんな時こそ、子どもたちと同じように「マリアさまに ならって やさしい こころ」を胸に刻み、周りの人への思いやりの心を持ちながら過ごしていきたいものですね。
                          (園長 鬼木 昌之)
<2021年度>4月号
チャレンジ
~新しい時代の新しい教育~
2021年4月12日

  みなさん、入園・進級おめでとうございます。

 初めての幼稚園生活が始まる年少さんだけでなく、新しいクラスで、新しい友だち、新しい先生と出会った年中さんや年長さんも、わくわくドキドキしながら新年度を迎えたことでしょう。これから共に過ごす日々、友だちや先生と一緒に、楽しく幼稚園生活を送りながら、一人ひとり、神さまから与えられた力を伸ばしていきましょう。

 コロナウイルスの影響で人々の暮らしが大きく変化した昨年度でしたが、コロナウイルスの感染拡大がなければ2020年度は「教育改革の年」という話題がもっと大きくクローズアップされるはずでした。

 情報通信技術の発達や、グローバル化の影響で、これからの時代は「今までの経験が役に立たない時代」になろうとしています。

「子どもたちの65%は将来、今は存在していない職業に就く」(キャシー・デビッドソン)
「今後10年~20年程度で、半数近くの仕事が自動化される可能性が高い」(マイケル・オズボーン)

そのような時代を生きる子どもたちの力を育むために、新しい小学校の学習指導要領が2020年度から実施されました。(中学校は2021年度・高等学校は2022年度から)そこでは「知識の量」から「知識の質」への変換を図るべく、プログラミングやアクティブラーニング、英語教育などが導入され、子どもたちの学び方が大きく変わることになり、そこに多くの関心が注がれるはずでした。

 このような変化は、子どもたちが大人になる、今から少し先の時代のことと思われていましたが、コロナウイルスの感染拡大により、見通しがたたない社会が一気に訪れました。その結果「正解のない社会」への対応が、未来を生きる子どもたちだけではなく、現代を生きるわたしたちにも求められることになりました。

 天使幼稚園でも、感染予防を図りつつ、「わくドキサマーDay(年長:お泊り保育)」や「エンジョイスポーツDay(運動会)」「クリスマスのおくりもの(クリスマス会)」など、子どもたちの成長に欠かせない様々な行事を、形を変えながら実施してきました。コロナウイルス終息の見通しがたたない今年度も、同じように知恵と工夫とで乗り越えなくてはならない日が続いていきます。

 これらのことを踏まえつつ、今年度は「チャレンジ~~新しい時代の新しい教育~」を天使幼稚園の目標として掲げました。「今まで通りにできない」のではなく、新しい時代に必要な力を育てるためには「何ができるか」と発想を変え、「新しい時代に向けた新しい教育」を生み出すことができるようチャレンジしてまいります。さらに、未来を生きる子どもたちに必要な力の土台を育むために、
  ① 自己肯定感を高めること
  ② 自ら学ぶ意欲を養うこと
  ③ アクティブラーニングにつながる友だちとの協力やコミュニケーション能力を養うこと
  ④ 思いやりの心を育てること
この4つに焦点を当て、保育内容を充実させていきたいと考えています。大きく変わりゆく時代の中、常に先を見通し、その根底にある「ねらい」を確かめつつ歩んでまいります。

 今年度もご理解とご協力を賜りますよう、よろしくお願いいたします。
                   (園長 鬼木 昌之)