学校法人 聖フランシスコ学園 天使幼稚園
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<卒園文集>
2024年3月19日
できるようになったよ
 2021年4月。コロナウイルスが蔓延(まんえん)し、マスク生活が続く中、みなさんは天使幼稚園に入園してきました。感染を予防するため多くの制約がある中での幼稚園生活のスタートになりました。お誕生会は大勢の人が集まるのを避けるため、誕生日の人だけ集まって、園長先生の「でかでか紙芝居」を見てもらいました。運動会は3クラスずつ2日に分けて開催。秋の遠足の代わりに「おむすびころりん」の人形劇の鑑賞教室を開きました。でも12月のクリスマス会は年少さん全員で「サラダでげんき」の劇をすることができました。

 年中さんになった時もまだコロナウイルスの流行は続いていましたが、先生たちは知恵を出し合いながら感染対策を講じ、遠足を再開するなど、前の年にできなかったことを少しずつできるようにした1年間でした。

 そのころのみなさんは、「ぼく4さい。」「わたしも、4さい。」と、よく自分の年を教えてくれました。また、「ねんちゅうさんだから、できるようになったよ。」と、年中さんになってからできるようになったことを、たくさん話してくれました。一人ひとりの成長の様子を見ても、できることがいっぱい増えていました。

 それから1年以上が経ち、みなさんができるようになったことは、もっともっと増えていますね。日本地図のおしごとが終わり世界地図に取り組んだ人。難しい折り紙がすいすいできるようになった人。鉄棒で前回りだけでなく、逆上がりもできるようになった人やボールを投げたり取ったりするのが上手になった人。また、自分でたくさんの本を読むことができるようになった人やお友だちがいっぱい増えた人……。この1年を振り返ってみると、できるようになったことがいっぱいいっぱい見つかるのではありませんか?

 4月からみなさんは1年生。幼稚園時代とは時間の使い方も、勉強への取り組み方も大きく変わります。さらに学年が進むにつれて、それまでは、新しいことに挑戦しても簡単にできていたことが、だんだんできるまでに時間がかかったり、できなくなったりする経験が増えていきます。
でも、簡単にできないことが増えてきた時こそが、みなさんにとって大きく成長するチャンスです。
「人間に必要なのは困ることだ。絶体絶命に追い込まれたときに出る力が本当の力です。」

これは本田技研工業の創立者、本田宗一郎さんのことばです。困難に出会ったとき、そこであきらめることなく、どうすればできるようになるかを考えたり、先生やお家の方、友だちに相談したりしながら、「絶対にできるようになるぞ。」という強い心を持って取り組むことを通して、困難を乗り越える力がついていきます。そして、その力が、みなさんがおとなになった時に役立つものです。

 マザー・テレサは、私たちに神さまからのメッセージを伝えてくれています。

「神様は私たちに、成功してほしいなんて思っていません。ただ、挑戦することを望んでいるだけよ。」

できるようになることではなく、できるようになるために挑戦すること、そして努力することこそ大切だという教えです。

 小学校に入ってから、そして中学校、高等学校、大学などに進む中、たくさん困難なことに出会っていくことでしょう。でも、そこで負けることなく、自分にはできるようになる力があるんだと自分を信じ、高い目標に向かって進むことを続けてみてください。

 「夢見ることができれば、それは実現できる。いつだって忘れないでいてほしい。」(ウォルト・ディズニー)
                  (園長 鬼木 昌之)
<園長だより「風」春休み月号>
2024年3月18日
ドラゴンボール
 『Dr.スランプ アラレちゃん』や『ドラゴンボール』の作者、鳥山明さんの突然の訃報に、国内からだけではなく、世界中から悲しみの声が届けられています。

 1980年に連載が始まり、1981年からアニメの放送が始まった『Dr.スランプ アラレちゃん』は、ペンギン村で繰り広げられる愉快なお話や、アラレちゃんやガッちゃん、村人たちのかわいくポップな姿が多くの人に受け入れられて大ヒットし、アラレちゃんの「んちゃ!」や「バイちゃ!」という挨拶は流行語になりました。

 『Dr.スランプ』に続いて1984年から連載が始まり、1986年からアニメの放送が始まった『ドラゴンボール』は、その後、世界的な大ヒット作品になりました。

 初期のドラゴンボールは、どちらかというと、Dr.スランプのスタイルを引き継いでいるようなコミカルな面がありました。ところが、鳥山明さんが「元々僕は、先の展開までジックリと考えるタイプではない。始まった時点では悟空が大猿に変身したり、サイヤ人という宇宙人だったというようなことは全然考えていなかった。先の話を考えずに行き当たりばったりで描くというのはけっこうスリルがあって悪くない。」と自ら語っているように、話の進展に伴い、その世界観がどんどん変化していきました。主人公の孫悟空の成長とともに、敵となるキャラクターもどんどん進化し、その物語や絵もシリアスなものに変化していきました。

 小さいころから強くなりたいという思いを持った悟空は、多くの人と関りを持ちながら修行に励み、いろいろな技を身に着けながら力をつけていきました。やがて、地球や宇宙を破壊するような強い敵が現れると、相手の力を上回ることができるようさらに腕をみがき、敵を打ち負かしました。その次に現れる敵は、前回の敵の力がひ弱に感じるほど強く、悟空はさらに新たな技を身に着け、さらにかつての敵が仲間となって協力しながら強力な敵を倒していきました。

 この物語の中で、読者は悟空という一人の少年の成長を、はらはら、わくわくしながら見守っていました。さらに作者の鳥山明さんが、先の展開を決めずに話を進めたことで、読者も次にどのような展開が待っているかを予想することができず、楽しみが増していきました。

 ドラゴンボールには「夢」や「冒険」、「挑戦」や「戦い」そして「友情」がたくさん盛り込まれています。そして、それはこれから育ちゆく子どもたちにとっても、大切なものです。ドラゴンボールのストーリーの先が決まっておらず、次の展開を見通すことができなかったように、子どもたちの未来も、多くの可能性を秘め、見通すことができません。だからこそ、悟空と同じように、逆境にめげず、勇気を持って立ち向かっていく力や、仲間を大切に思い手を携えながら共に成長していく心を、この物語を通して学ぶことができるのではないでしょうか。

 また、Dr.スランプのアラレちゃんは、いたずらっ子で失敗ばかりするけれど、みんなから愛され、かわいがられていました。それは、その行動が利己的ではなく、みんなと仲良く楽しく過ごしたいという思いから出ていたからでしょう。

 卒園する年長さんや、4月に進級する年中さんや年少さんにも、二人の主人公のように、困難なことに立ち向かいつつそれを乗り越える力や、周りの人々との関わりの中で、思いやりの心を持って互いに助け合う力を養っていってほしいと願っています。
                     (園長 鬼木 昌之)
<園長だより「風」2月号>
雛祭り/調べることの大切さ
2024年2月21日
 ♪明かりを つけましょ 雪洞(ぼんぼり)に♪
      (うれしい ひなまつり=サトウハチロー作詞:河村光陽作曲)
もうすぐ雛祭り。天使幼稚園でもホール前に雛人形を飾り、子どもたちも学年ごとにお雛様の制作をして雛祭りを迎える準備をしています。

 雛祭りは、平安時代に中国から伝わった五節句(1月7日の人日、3月3日の上巳、5月5日の端午、7月7日の七夕、9月9日の重陽)の一つ「上巳の節句」が起源となっています。「巳」は十二支の「蛇(へび)」のことで、蛇は脱皮を繰り返し成長することから、災いや穢れ(けがれ)を脱皮するように取り去り身を清める日とされていたそうです。この日は、水で体を清めて宴(うたげ)を催したり、紙でひとがた(人形)を作り、それに穢れを移して川に流したりしていました。

 また、平安時代には、お人形を使った「ひいな遊び」が貴族の女の子の間で盛んに行われていました。やがて、ひいな遊びのお人形とひとがたとが合わさり、流し雛となりました。

 江戸時代になり、人形を作る技術が高まって豪華な人形を作ることができるようになると、流し雛ではなく、女の子の健康を願って作ったお人形を飾るようになりました。こうして雛飾りが誕生し、雛祭りが女の子のお祝いになっていきました。

 雛人形の制作をしている子どもたちが、時々ホール前の雛飾りを見にきています。「あっ、おもちが ある。」「ももの はなが あった。」といろいろな発見をする一方、かごや牛車を指さして「これは なに?どうして かざってるの?」など疑問を持ち尋ねてきます。このように「なに?」「どうして?」という疑問を持つことが、子どもたちの成長にとって大切な、学びのきっかけになるものです。

 「雛祭りは桃の節句ともいって、ちょうどこのころ桃の花が咲き、桃には悪いものを追い払ってくれる力があると信じられていたから、桃を飾るようになったそうですよ。」「下の方の段には、お雛様のお嫁入りの道具の箪笥(たんす)や火鉢(ひばち)、そしてかごや牛車があるのですよ。」と、その場で教えてあげることで子どもたちの知識を広げてあげることができます。さらに、その子に調べる手段や力があるような時には、「図鑑や絵本で調べてみてごらん。」と、主体的に調べてみることを促すことで、その子の学ぶ力を高めていくことができるものです。

 ♪お内裏様と お雛さま 二人並んで すまし顔♪
ここに歌われている「内裏」とは、天皇が住み,儀式や執務などを行う宮殿のことで、お内裏様というのはもともと男雛、女雛二体を合わせた呼び名でした。ところがこの歌を通して、男雛を「お内裏様」女雛を「お雛様」と思って大きくなった人が増えてしまいました。

 雛飾りには「右近の橘」と「左近の桜」も飾られています。正面から見ると黄色い橘は左に、ピンクの桜は右に飾ってあります。「おや?左右が反対?」実は、この右・左は正面から見た位置ではなく、ひな飾りのモデルとなった天皇・皇后(お内裏様)から見て右・左を指しています。このように視点を変えると、見方がかわることや、歴史的な意味合いも、雛人形を通して学ぶことができます。

 ♪すこし 白酒召されたか 赤いお顔の 右大臣♪
右左の見方を知って雛飾りを見ると、赤い顔をしたお人形は向かって右に座し、こちらは左大臣だと分かります。作詞家の方の勘違いだったのでしょうか。さりげなく歌っている歌も、意味を考えながら確かめると、「本当は〇〇だ」と気付くことがたくさんあります。

 この他にも「雪洞って何、どうしてぼんぼりっていうの?」「菱餅は3色と5色があるけれど、どうして?」「三人官女は何をしているの?」など、好奇心を沸き立たせると、知りたいことや疑問が次々とでてくることでしょう。分からないことを見つけ出し、誰かに聞いたり自分で調べたりする。雛飾り一つからも学びを広げることができるものです。 
                 (園長 鬼木 昌之)
<園長だより「風」2月号>
みんなから愛される子に
2024年1月25日
 毎年1月に大田区私立幼稚園連合会の新年の集いが開かれ、そこでは区内の幼稚園に勤める先生の永年勤続表彰や、教養講演会が行われます。今年も1月17日(水)に開かれた集いに、天使幼稚園の先生も全員が参加しました。今年の教養講演会の講師は、武士道研究家の石川真理子先生で「女子の武士道」というテーマでお話をしてくださいました。「武士道」というと、堅苦しく厳しいという印象がありますが、石川先生は、人として成長していくための本質は何か、そしてそれを生かすためにはどうするべきかという、これから育ちゆく子どもたちにとって大切な教えを語ってくださいました。

 このお話の中で最も印象に残ったのは、石川先生がご自身の子育ての中で大切にしてきた「みんなから愛される子に育てたい。」という思いでした。子を持つ親として、その子が将来、どのように成長していくのかは、楽しみでもあり、心配でもあるものです。「幸せな人生を送ってほしい。」「人の役に立つ人になってほしい。」「自分らしく生きてほしい。」「賢く成長してほしい。」「スポーツや芸術の道を究めてほしい。」等々。それぞれの家庭の中で、いろいろな思いがある中で、「みんなから愛される人に。」という目標は、多くの保護者の方々の共通の思いにつながるのではないでしょうか。

 チャールズ・ディケンズが著した「クリスマス・キャロル」の主人公スクルージは、金儲け一筋に生きていましたが、ある年のクリスマスの夜、過去、現在、未来の精霊によって、自らの人生を見せられます。人々から厭(いと)われ、見捨てられた墓碑に刻まれた自分の名前を見せられたスクル―ジは、今までの人生観を改め、街の人々の中に飛び込んでいきます。このお話だけでなく、人は一人では生きていけず、多くの人々との交わりの中でこそ幸せに暮らしていけるという例は、枚挙に暇(いとま)がありません。「みんなから愛される」ことは、その人の人生の重要な要素となっています。

 石川先生は、そのために必要な子育てのポイントを六つ示してくださいました。

 一つ目は「礼」。挨拶ができるよう育てること。人と人とのつながりの中で、自分の心を開き、相手を大切に思いながら言葉を交わし合うことを通して、互いの心が通っていきます。二つ目は「義」。うそをつかないことや、正しいことを貫き通すことで、周りの人からの信頼も厚くなるものです。三つ目は「悌」。弱い者をいじめないこと。小さな人を思いやり、大切にしていくことを、日ごろから心掛けていくことが大切です。四番目は「勇」。自分から進んでできる意欲や積極性、勇気が求められています。五つ目は「孝」。目上の人に丁寧に接すること。現代社会ではみんな平等という発想で、目上の人にでも自分の意見をしっかり伝えることも大切だと教えられるようになりました。もちろん、それも大切なことですが、目上の人であろうが目下の人であろうが、相手の思いや考えを尊重し、より良い考えを生み出す努力が、人と人とのふれあいの中でとても大切です。そして六つ目が「恥」。これは、他人に見られて恥ずかしいということではなく、自分自身の心で自分を見た時、恥ずべきことをしていないかということが重要だということです。

 3学期の始業式の日に、子どもたちに三つのお願いをしました。それは「我慢すること・譲り合うこと・話し合うこと」の三つです。今、教育の世界では「主体性」を重んじることが大切にされています。ただ、それは自分がしたいことを自由気ままにするということではなく、主体的に自分を高める行動ができるようにすることです。また、自分がしたいことを我慢して相手に譲ることも大切になります。もし、目の前の子が、自由気ままにわがままを言っていたら、「みんなから愛される子ども」になっているでしょうか。自分を高めるためには、がまんをすることを含め、自ら困難なことに立ち向かうこと、そして、周りのおとなは、子どもがしたい放題にしていることを放置するのではなく、時には毅然(きぜん)としてやるべきことを教える姿勢がとても大切になります。

 「みんなから愛される子どもに育てる」ために、今、どのように子どもと向かい合うかが、問われています。
                   (園長 鬼木 昌之)
<園長だより「風」1月号>
辰 年
2024年1月9日
 2024(令和6)年「辰年」がスタートしました。「辰」という文字には「振=ふるう、ととのう」という意味があり、陽気が良くなって万物が振動し、草木が成長して形が整う状態を表すとされています。また辰年は動物では「竜:龍年」とされ、天空を飛び回り嵐を巻き起こす龍の姿から、勇ましさや躍動する年になるというイメージがあるようです。

 「振」「震」「唇」「農」などには「辰」が含まれています。「農」の文字も、「曲」の部分は「木木」が元になっていて、木が生えた大地を道具を使って耕す様子を表していて、これらの文字には「揺り動く」という意味が込められています。

 今年のお正月は「辰」ではなく「震」からの始まりになってしまいました。元日に起きた能登半島地震では多くの方が犠牲になり、まだまだ多くの方々が避難生活を送っています。2日には羽田空港で飛行機事故が起きました。「振興」の「振」ではなく、「地震」や「震えあがる」、「震」からのスタートです。亡くなられた方々のご冥福を祈りつつ、復興に向けてどんなお手伝いが出来るかを考えるお正月になりました。

 能登半島地震では津波が発生しました。地震直後のニュースでは、津波の映像はほとんど報道されませんでしたが、その後、北陸各地に大きな津波が到達していたという情報が伝えられています。しかし、東日本大震災の経験を生かし、一人ひとりが直ちに避難行動を行ったり、近所の住民同士が声をかけあって逃げたりしたおかげで、これまでのところ津波による被害者についての情報はなく、過去の経験を生かして身を守る行動ができていたようです。日航機の事故では、乗客乗員379人全員が無事に脱出することができました。その背景には、非常時でも落ち着いて行動することができるように、乗務員は非常時の脱出訓練を繰り返し行っていることが生かされ、また乗客も、乗務員との信頼関係の中、誘導の指示に従って行動し、無事避難できたそうです。このように、有事に備え、日ごろから対策を練ったり、訓練を重ねたりして、落ち着いて対処できる準備をしておくこと、そして信頼関係の中で行動することの必要性を、改めて認識することができた災害・事故でもありました。

 ところで、1月は英語で“January”和名は「睦月」です。January の語源は、2つの顔を持つローマ神話の「Janus(ヤヌス)」からきています。Janusは入口と出口を司る門の神ともいわれ、前年と今年の境を守っているそうです。「睦月」は、お正月に家族や親せきが集まり互いに睦み合うことから生まれました。Janus神のように、過去を振り返りつつ未来にその知恵を生かすこと、また、互いに睦み合い信頼しあって日々を生きること。そのことの大切さを教えてもらった1年のスタートの日々でもありました。

 令和6年は、平成が続いていれば36年、そして昭和でいうと99年になります。1923(大正12)年9月1日に発生した関東大震災直後に迎えた昭和元年。昭和は昭和恐慌から第2次世界大戦と多くの困難に見舞われる中スタートましたが、その後、戦後復興期から高度経済成長期を迎えるなど、大きく進歩していった時代でした。特にこの時代は、映画「ALWAYS 3丁目の夕日」に描かれているように、貧しいながらも暖かいふれあいがある中、未来を信じて生きていることができる時代でもありました。

 地震や事故から始まった2024年だけれど、人々が援け合い、大きく進歩した昭和のように、充実した年になっていきますようにと願ってやみません。
                        (園長 鬼木 昌之)
<園長だより「風」12月号>
「てぶくろ」と「おおきなかぶ」
2023年12月19日
 2022年2月24日、ロシアがウクライナに侵攻しました。また、今年の10月7日にはハマスがイスラエルを襲撃し、その後イスラエルがガザ地区への攻撃を仕掛けました。今、東欧や中東で起きている戦争によって、大勢の方が犠牲になり、住んでいる人々は日々の生活にも窮する状況になっています。イエスさまがお生まれになった地ベツレヘムがある中東の教会では、今年はクリスマスの祝賀を取りやめ、平和を願う祈りの式のみを行うところがあるそうです。

 天使幼稚園の今年のクリスマス会。年中・年少の音楽劇は、ウクライナの民話「てぶくろ」と、ロシアの民話「おおきなかぶ」でした。この二つの音楽劇の選考。初めから意図したものではなく、それぞれの担当の先生が選んで提案したところ、偶然、戦争をしている二つの国のお話になっていました。何か神さまからのメッセージが込められているような気がします。

 おじいさんが落とした片方の手袋。それを見つけたくいしんぼうねずみが、その中で暮らし始めました。そこへ、ぴょんぴょんがえるや、はやあしうさぎ、おしゃれぎつね、はいいろおおかみ、きばもちいのしし達がやってきて仲間に入り。最後はのっそりくまがやってきて「ぼくも入れて」。手袋は、今にもはじけそうになるけれど、♪あったかいね きもちいいね ここがすき きみがすき いっしょが だいすき♪(てぶくろ:劇中歌)譲り合い、援け合って楽しく過ごす様子が描かれています。

 大きく大きく育ったおじいさんが植えたかぶ。おじいさんが抜こうとしても抜けません。そこでおばあさんを呼んできて一緒にかぶを抜こうとしますが、かぶは抜けません。おばあさんは孫を呼び、孫は犬を呼び、犬は猫を呼んできますが、それでもかぶは抜けません。最後に猫がねずみを呼んできて「うんとこしょ、どっこいしょ。」すると、やっとかぶを抜くことができました。みんなで力を合わせて一つの目標に向かって進むことや、小さなねずみが手伝った時にかぶが抜けたことを通して、みんなと一緒に力を合わせることで大きなことを成し遂げられることを表しています。

 この二つのお話に共通した「共に生きる」という心を忘れたところに、いさかいや戦いが生まれてしまいます。

 2000年前、神さまは独り子イエスさまを、私たちに贈ってくださいました。

「わたしたちが神を愛したのではなく、神がわたしたちを愛して、わたしたちの罪を償ういけにえとして、御子をお遣わしになりました。ここに愛があります。(ヨハネの手紙一 4章10)

神さまを裏切り続けた人間だけれど、神さまは常に人間を愛してくださっているという、神さまからのメッセージが込められています。

そのイエスさまは

「あなたがたに新しい掟を与える。互いに愛し合いなさい。わたしがあなたがたを愛したように、あなたがたも互いに愛し合いなさい。」(ヨハネによる福音書 13:34)

と、神さまが私たちを愛し大切にしたように、わたしたちもお互いに大切にし合いなさいと教えられました。

 もうすぐクリスマス。世界の平和を願いつつ、神さまが私たちに贈りものをしてくださったように、わたしたちも身近な人や世界に住む人々に、自分に出来る贈り物をする。そんなクリスマスを送ることができると良いですね。 
                        (園長 鬼木 昌之)
<園長だより「風」12月号>
一生勉強 一生青春
2023年11月24日
 先日NHKの「プロファイラー」という番組で、伊能忠敬の人生を紹介していました。

 1745年、千葉県九十九里浜で生まれた忠敬は、酒造業や金融業、運送業を営む伊能家の養子になり、その才覚によって店を繁盛させました。伊能家の蔵には、先祖が書いた運送業に係る多くの資料が残っていました。それをまとめた先祖は、商売を隠居した後、それらの編纂に取り組んだという事を知った忠敬は、年をとってもできることがあるものだと感心したそうです。

 そして忠敬自身も49歳の時家督を長男に譲り、江戸に出て天文学者の高橋至時と出会い、師と仰ぎます。当時、天文学の世界では地球の円周がどれくらいなのかということに大きな関心が持たれていました。それを求めるためには子午線一度の距離を求めることが必要です。より正確な距離を求めるためには江戸と蝦夷(今の北海道)までほどの距離を調べる必要があるということから、高橋至時の助けを得て、幕府に蝦夷地の測量を申し出、それを認めてもらうことができました。こうして忠敬の測量の旅が始まりました。

 忠敬は55歳から73歳になるまで、繰り返し繰り返し測量の旅に出かけでデーターを集め、その死後、地図作りを受け継いだ弟子たちの手によって、1821年、実測による「大日本沿海輿地全図」が完成しました。忠敬が測量で歩いた距離は、地球1周分の4万kmほどにもなるそうです。忠敬は旅の途中娘に送った手紙に「地図作りは自分の天命だ」と書いて送っていました。

 今年の6月「美の巨人たち」という番組では、アンリ・マティスを取り上げていました。

 1869年にフランスで生まれたマティスは「色彩の魔術師」といわれる20世紀を代表する画家の一人です。多くの意欲的な作品を生み出してきたマティスでしたが、72歳のとき大病を患い、絵筆を握って大きなキャンバスに向かうことが難しくなりました。しかし、芸術の道をあきらめることなく、ベッドの上でもできる「切り絵」に可能性を見出し、新たな作風を作り上げました。

 マティスの介護を行っていたモニーク・ブルジョアがシスターになったことが縁になり、マティスはその集大成となる、ヴァンスのロザリオ聖堂の内装やステンドグラスのデザインに取り組むことになりました。以前のような体力がないマティスは、座ったまま長い棒の先に筆を結び付けて、絵を描きました。真っ白な壁に描かれた線描画。そこには「色彩の魔術師」と呼ばれたマティスの鮮やかな色は全くありません。ところが南仏の暖かな日差しがステンドグラスを通して壁に映ると、そこには美しい色があふれてくるよう設計されていました。光が聖堂の奥にまで差し込む冬の午前11時頃が最も美しい光景が広がるとのこと。マティスの作品の集大成らしいすばらしい聖堂になりました。

 今日紹介した二人の偉人に共通しているのは、年を取ったり逆境にあったりしたとしても、常に自分ができることを模索し向上する信念を持っていることでした。

      私がこの世に生れてきたのは 私でなければできない仕事が
         何かひとつこの世にあるからなのだ (相田 みつを)

どんな環境にあっても、自らに与えられた才能を活かすことができるように工夫をし、努力を重ねる。そこに新たな可能性が生まれていきます。

 相田みつをさんの言葉の中に「一生勉強 一生青春」というものもあります。学ぶ意欲を持ち、日々学び続ける人は、いつまでも若さを失わない。示唆に富んだことばです。忠敬やマティスのように年を取ったり、体が思うように動かなくなるのを待つまでもなく「わたしでなければできない仕事」を見つけ取り組むことが、全ての人の生き生きとした人生に求められているのではないでしょうか。
                        (園長 鬼木 昌之)
<園長だより「風」11月号>
秋の行事と新しい取り組み
2023年10月25日
 猛烈に暑く長かった今年の夏もようやく終わり、このところさわやかな秋の日が続いています。10月8日の運動会も、ほどよい曇り空で、暑さ対策も必要なく実施することができました。コロナの感染予防のため過去3年間、縮小バージョンで行ってきた運動会でしたが、今年は4年ぶりにお客様の人数制限をなくし、小学生競技や未就園児競技を復活しました。多くの方々からの応援を受けながら、子どもたちは力いっぱいそれぞれの競技に取り組んでいました。運動会へのご参加、そして子どもたちへの応援、ありがとうございました。ただ、今年は、いつも開催していた前日の土曜日が、近隣の小学校の運動会と重なるということで、日曜日に移動したため、当日参加ができないお子さまがいらっしゃり、来年以降の開催日については検討をしているところです。

 秋の遠足も今年はお天気に恵まれました。特に年長さんのお芋ほり遠足。過去のブログを見ると「雨が心配だけれど出かけます」「途中で雨が降り始めました」という年が多かったのですが、今年は雨の心配をすることなく行くことができました。さらに、今年は世田谷区のお芋畑に場所を変更したので、バスに乗る時間も短くすることができました。畑の方のお話で「まだ時期がちょっと早いのでお芋が小さいかもしれません。」という事でしたが、予想に反し大きなお芋を掘ることができました。

 「スポーツの秋」「読書の秋」「芸術の秋」「食欲の秋」……。秋はいろいろなことに取り組むのに適した季節です。学校や幼稚園ではこの季節に多くの行事を企画しています。それらの行事は、子どもたちにとっての良い思い出となると同時に、一人ひとりの子どもを育てる大きな力となるものです。

 「不易流行」という言葉があります。「いつまでも変わらない本質的なものを大事にしつつ、新しい時代に応じて変化することが大切」とされています。天使幼稚園でも2018年に「ステップアップ ~ねらいの確認と振り返りを通して~」という目標を掲げて以来、それぞれの行事のねらいは何かを踏まえつつ、今まで通りではなく、新しい時代に向けてもっと良い取り組みはないかを考えながら取り組んできました。

 未来を生きる子どもたちに必要な力として、「自主性」や「コミュニケーション能力」の重要性が示されています。天使幼稚園でも、子どもたちの話し合いの場を増やしたり、制作の時間も一人ひとりの個性が発揮できる活動を取り入れたりしています。

 その活動の一つとして、今年初めて「ハロウィンパーティ」を企画しました。今、街中やお店に出かけると、あちらこちらにハロウィンの飾りがあふれています。もともとはヨーロッパの古代ケルトの秋の収穫や悪霊を追い払うお祭りだったのが、日本ではお店の品物をたくさん売るための方法として取り入れられ、その後、秋の風物詩となりました。子どもたちと一緒にハロウィンの起源を学びつつ、お兄さんやお姉さんたちが楽しんでいるハロウィンパーティを自分たちも楽しもうというものです。さらに、今回はハロウィン衣装を一人ひとりが思い思いに作ることを通して、他の人とは異なるオンリーワンの衣装を作りました。ここでも個性を活かす場を提供しています。

 この後も、秋の自然を感じることができるように園の近くをお散歩したり、子どもたちの主体性を養ったり、コミュニケーション能力を高めたりできる制作を検討したりもしています。また、園内の樹木などに名前プレートを取り付け、子どもたちが木々の名前を知りつつ、自然に親しむことができる場の提供も進めているところです。

 多くのものや活動を通して、一人ひとりの子どもたちの個性を育むことができるよう、これからも「ねらい(本質)」を大切にしつつ、様々な活動に取り組んでいきたいと考えています。
                         (園長 鬼木 昌之)
<園長だより「風」10月号>
2023年9月25日
 今年は、9月に入っても異常な暑さが続き、気温が30℃を超える真夏日からなかなか解放されず、園庭を使っての運動会の練習が思うようにできていません。いつになったら秋らしい日が訪れるのでしょうか。

 暦の上では立秋(今年は8月8日)から立冬(同11月8日)までが「秋」とされています。「立秋」は二十四節気のひとつの「大暑」の次に訪れ、最も暑い時から少し涼しくなり始める季節ということで、まだまだ涼しさを感じられる時期ではないようです。旧暦では7月から9月が「秋」と呼ばれます。月の満ち欠けをもとに定められた旧暦は、今の暦とは1ヶ月ほどずれ、今年は8月16日が旧暦の7月1日にあたります。こちらも実際に秋を感じられるのはもう少し先のことになりそうです。気象庁では9月から11月を「秋」と定義しています。こちらの方が、現代の季節感に近いようです。天文学では秋分の日(今年は9月23日)から冬至(同12月22日)までを「秋」としています。例年であればこの頃が秋を感じられる時期のようです。「秋」といっても、いろいろな分け方があるものですね。

 体感的にはいつごろから秋を感じられるようになるのでしょう。1日の最高気温が25℃を超える日は夏日と呼ばれます。という事は、最高気温が25℃を下回ると秋らしくなるのではないでしょうか。今年はもう少し先のことになりそうです。

 虫の声でも秋を感じることができます。こんなに暑い日が続いているけれど、夏の間ミ~ンミ~ン、ジージー、シャカシャカと元気に鳴いていたセミの声がぴたりと聞こえなくなりました。ただ、今年は夏の終わりを告げるツクツクホウシやカナカナカナとなくヒグラシの声はあまり聞くことができなかったようです。その一方、日が暮れるとリーリーリーと秋の虫の声も聞こえています。夏休みに水遊びをしていると飛んできていたオニヤンマに替わり、赤とんぼの姿が見られるようになりました。虫たちの世界では秋が進んでいるようです。

 天使幼稚園の木のおうちの裏に彼岸花が咲きました。こちらも暑い日が続く中でも9月19日に花が咲き始めていました。その年の気候に関わりなく、秋のお彼岸に合わせて咲く彼岸花。不思議なものです。玄関脇の花壇にはコスモスが咲いています。そろそろ各地の広大なコスモス畑からの花のたよりも届きそうです。また、道を歩いているとどこからともなく甘い香りが漂ってくるキンモクセイも、そろそろ開花の時期を迎えます。街中ではあまり見かけないけれど、ハギやリンドウ、オミナエシ、そしてススキなども、わたしたちに秋を感じさせてくれます。さらに、ナシやモモ、クリにカキと、様々なくだものが私たちの食生活を彩ってくれます。

 春夏秋冬、四季の移り変わりがあるのが日本の気候の特徴で、古(いにしえ)から、人々は、五感を研ぎ澄まして季節の移ろいを感じ楽しんできました。近年、気象の変動が激しく、夏が終わったらもう冬がやってきたようだという年も増えてきています。また温室栽培が発達し、その食べ物の季節でなくても、多くの食べ物を食することができるようになりました。でも、虫たちや草花のように、季節を確実に示してくれるものが私たちの周りに数多く存在しています。

 季節感は、わたしたちの感性を育ててくれるものでもあります。肌をさすっていく風の感触。耳に聞こえる季節季節の虫の声。旬を味わうことで感じる季節の移り変わり。空に浮かぶ雲の変化……。それらをゆっくりと味わうことは、おとなにとっても子どもにとっても、心が安らぎ、新しい何かを発見したり、新たなあゆみを始めたりすることを後押ししたりしてくれます。

 これからも迎える秋の夜長。子どもたちの心と感性を育てるためにも、ゆったりと秋を感じることができる時間を持っていけると良いですね。
                         (園長 鬼木 昌之)
<園長だより「風」9月号>
見守りの力
2023年9月4日
 長い夏休み。遠方のおじいさんやおばあさんに会いに行った方もいらっしゃることでしょう。「いつもは、足が痛い、腰が痛いといって動かないのに、孫が来ると張り切って動くことができるのだから……。やっぱり孫の力ってすごいね。」というような光景が、多く見られたのではないでしょうか。

 「孫の力」だけでなく、世の中には「〇〇の力」が数多く存在しています。

 農作物を育てる時、音楽を流すと「音楽の力」で、植物の生育が良くなったり味が良くなったりするといわれています。農作物に留まらず、酒蔵で音楽を流したり、牛小屋に音楽を流したりするところもあります。その音楽の中でも1/fゆらぎが特に有効とのこと。この1/fゆらぎは、人の心拍の間隔や小川のせせらぎの音、木漏れ日のゆらぎ、髪の揺れなどにも見られ、人間にもいやしを与えてくれるもの。特にモーツアルトの音楽に1/fゆらぎが多く含まれているというので、数多く活用されています。

 「色の力」も研究が進んでいます。赤を見ると、気分が高まったり、やる気が芽生えたり、緑を見ると気持ちが落ち着いたり、リラックスして疲労が回復したりするといわれています。他にも、女の子の中で好きな子が多いピンクは、かわいらしさが、水色は、冷静さやさわやかさ、清潔さなどが感じられるとされています。この研究は部屋の色などを決める時にも役立てられています。
 花にも人々にいやしを与えてくれる「花の力」があります。四季折々に花壇や街中に咲く草花を見ると季節の移ろいを感じながら、落ち着いた気持ちや楽しい気持ちになったり、部屋の中に花を飾ると、リラックスしたり、生産性が上がったりする効果があるとされています。

 日々育ちゆく子どもたちにとって「友だちの力」は大きなものです。お家の方とは異なる人との交わりが始まった未就園児の子どもたち。初めは、一人遊びが中心だったものが、次第に周りの子どもたちの様子を見ながら、自分もやってみようかな……と真似っこをするようになっていきます。やがて、同じおもちゃを使いたいお友だちとぶつかり合う中、いつも自分の思い通りに出来るわけではないことや、「か~して。」「ど~ぞ。」という譲り合いを学び、社会性を身に着けていきます。さらに大きくなるにつれて、信頼しあえる友だちを見つけ、おとなになっても交流を続けるというケースも見られるようになります。また、「朱に交われば赤くなる」ということわざがあるように、交わる人の影響力は、それはそれは大きなものになっていきます。

 最近は「見守りの力」も意識されるようになりました。高齢者が増えていくこれからの時代、その方々が「オレオレ詐欺」のような「特殊詐欺」に巻き込まれないようにするために、高齢者の方を見守っていこうというものです。

 この「見守りの力」は、子育てでも大切な心構えです。まだ何もできない赤ちゃんの頃は、すべてのことを周りの人がしてあげることが必要な時期です。しかし、一つひとつ出来ることが増えていくと、周りからの手助けが、かえって子どもの成長の妨げになることも出てきます。「子どもには、自分を育てる力(自己教育力)が備わっている」というのがモンテッソーリ教育の根底にあります。おとなはその力を育むために、自分のことは自分でする環境を整えることが求められているのです。

 幼稚園でお帰りの時、自分の荷物を忘れて帰るケースをよく見かけます。よく見ていると、お帰りの時間、お家の方が子どもたちの荷物をすべて抱え、子どもたちは何も持たずに帰っているというケースが見られます。これでは自分の荷物を自分で管理するという習慣が身に付くはずはありません。小さなことのようだけど、ここで自分のことは自分でという「自立の芽」を摘み取っているようです。

 そこで必要になるのが「見守りの力」です。少々時間はかかるかもしれないけれど、じっと見守りながら自己教育力を育てていく。自分の荷物の管理に留まらず、生活すべての面で、子どもの成長のためにじっと「見守る」環境を整えていくことが、子育ての場面で大切な親の心構えになるのです。「自分のことを自分ですることができる子ども」になることができるように、すぐに手を出すことをがまんしながら「見守りの力」を大切にしていただければと願っています。
                (園長 鬼木 昌之)
<園長だより「風」夏休み号>
自然の力と人類の知恵
2023年7月19日
 先週は、九州から東北地方にかけて大雨が降り各地で被害が発生しました。この雨をもたらした梅雨前線が、関東の辺りでは北の方まで上がっていたので、南から暖かい風が入り込み、東京は猛烈に暑い日が続きました。水曜日は朝から雲一つない青空が広がり、強い日差しを受けて気温がぐんぐん上がり、てんしの家のテラスの温度計は、日陰にも関わらず41.5℃を示していました。

 この日は、夜の8時過ぎに国際宇宙ステーション(きぼう)が東京の真上近くを飛ぶことになっていました。昼間こんなに天気が良いから、国際宇宙ステーションが良く見えるだろうと思い、天使幼稚園のブログに「みなさんもみてくださいね」という記事を掲載しました。ところが、ところが……。夕方から雲が広がり始め、夜の8時頃にはポツンと雨粒が落ちてきて、国際宇宙ステーションを見ることはできませんでした。

 大雨や猛烈な暑さだけでなく、頭の上の雲ひとつコントロールすることができないほど、自然の力は大きなものです。

 関東平野を流れる利根川。昔、江戸湾(今の東京湾)に流れていたこの川は、「坂東太郎」と呼ばれ、九州の「筑紫次郎(筑後川)」、四国の「四国三郎(吉野川)」と共に「三大暴れ川」として知られ、流域に多くの被害をもたらしていました。江戸に居を構えた徳川家康は、江戸の町を洪水から守るために、利根川の流れを銚子に向けて変える一大プロジェクトを実施しました。あの大きな川の流れを変えてしまうとは、人の知恵や力も、なかなかのものです。

 名古屋がある濃尾平野には、木曽川・長良川・揖斐川という3本もの大きな河川が流れ込み、流域は何度も洪水の被害にあってきました。この地に暮らす人々は、その被害を防ぐために、住んでいる家だけではなく田畑を含めた土地をぐるっと囲う堤防を作りました。これが輪中と呼ばれるものです。そのおかげで洪水は減ったものの、今度は川の上流から運ばれ、洪水のたびに流域に広がっていた土や砂が川底に溜まり、川底が高くなったために、輪中の水を川に排水することができなくなったそうです。自然の力はなかなかあなどれないものです。そこで、今度は輪中の中の水路を掘り下げ、その土を高く盛ってそこを田に変えたと、先日の「ブラタモリ」で紹介していました。

 太古から人類は自然の猛威にさらされ、それを知恵と力で克服してきました。洪水があれば堤防を築き、水量を調整するためにダムを作ってきました。また、今回の猛暑もクーラーのおかげで、涼しく過ごすこともできています。

 こうして人類は自然に立ち向かい克服してきたけれど、自然も負けてはいません。人々が豊かな暮らしをするためにエネルギーを消費することに伴って発生した二酸化炭素は、今度は地球温暖化という現象を引き起こしました。ここ数年の異常気象も温暖化が影響しているといわれています。人類が自然を破壊すると、今度は自然が人類に新たな害をもたらしています。

  「知る“特権”を持つ者は、行動を取る義務があります」(アルベルト・アインシュタイン)

 知恵を積み重ねて住みよい世界を創り出してきた人類は、地球全体を守る義務を負っています。それは一人ひとりの知恵や工夫の積み重ねであったり、多くの人のひらめきと挑戦による新たな発明であったりします。

  「私はただ、まだ使える物が無駄になっているのを見ると怒りを覚えます」(聖マザー・テレサ)

先ずは、わたしたち一人ひとりが出来ることを自覚し実行すること。そして、子どもたちもこの問題を自分のこととして自覚できるように育て、その未来の知恵と力に託していきたいものです。
                         (園長 鬼木 昌之)
<園長だより「風」7月号>
子どもたちの成長に向けて
2023年6月23日
 先週の土曜日は、父の日の集いにおいでくださりありがとうございました。4年ぶりの全園児一緒の父の日の集い。お父さんの手を引いて自分のクラスを教えてあげる子どもたちの顔は、嬉しさにあふれていました。ホールでの園長タイム。今年はビデオを通して1日の生活の様子を見ていただきました。日差しが強く暑い中の園庭での活動。「おっちょこたいそう」を一緒に踊り「おやこでびゅ~ん」では、飛行機やロケットをしてくださり、子どもたちは歓声をあげながら楽しんでいました。子どもたちにとっても思い出深い1日になったことと思います。

 父の日の集いのお話でも紹介したように、昨年度の目標「発見する喜び・成長する喜び」を土台としながら、「援け合い・学び合い」を目標に掲げた今年度。この目標に向けて職員で話し合いをしながらいろいろな活動に取り組んでいます。

 子どもたちが大好きな遊びのひとつに砂遊びがあります。天使幼稚園の砂場は、猫が入り込まないようにネットで囲んでいます。その入り口を開けるためには長くて重いバーを持ち上げなければいけなかったので、今年度この部分にカーテンレールをつけて簡単に開け閉めが出来るようにしました。そのおかげで、毎日砂場を開放することができるようになりました。また、天使幼稚園では砂遊びの時、服が汚れないように水は使わないというルールがあったのですが、今年からそれを無くし、水を使っても良いことにしました。すると、バケツで水汲みに行っているお友だちを助けに行ったり、「そこに水を入れて!」「もっとたくさん水を運ぼう」「もっと深く掘ろう」など声をかけあったりするなど、子どもたちが協力し合う姿が多く見られるようになりました。さらに、これまで草木は採らないという約束もあったのですが、採っても良い草や葉を教えることを通して、おままごとにいろいろな草木の葉っぱを取り入れ、遊びが発展する姿が見られました。初めは泥で服が汚れていた子も、だんだん汚さずに遊ぶことができるようになっています。ルールを無くし自由に遊ぶ環境を整えることを通して子どもたちの遊びが広がってきています。

 年少から年長まで、その年齢に応じて、折ったり、切ったり、貼ったり、描いたり、組み立てたりする力を育むことをねらいとした子どもたちの制作活動も、今年度大きく見直しました。これまでは、先生が準備した折り紙などを使って、指示に沿って一人ひとりが自分の作品を作ってきました。今年度は、制作のねらいはそのままにしつつ、子どもたちが話し合いをしながら共同で作品を作る活動を数多く取り入れています。今、各クラスに掲示している梅雨の風景も、年長さんと年中さんの共同制作です。年長さんが作ったあじさいに、年中さんが作ったかえるを組み合わせ、クラスごとに工夫して壁に飾りました。一人ひとりが作ったものを組み合わせることによって、さらに大きな作品になる楽しさを味わい、共同制作を繰り返す中、自分の意見を出したり、お友だちの意見を聞いたりすることを通して、コミュニケーション力や協働の素地を少しずつ身に着けることができています。また、年少さんもちょうちょの制作をする時に、紙の色を自分で選ぶことができるようにすると、自分のオリジナルのちょうちょができて喜んでいる姿もみられました。

 モンテッソーリ教育の面でも、今年度は今まで取り扱っていなかったおしごとを数多く提供し、子どもたちが取り組みたいと思うおしごとの幅を広げています。花の水替えも子どもたちが興味を示したので、毎週、新しい花を準備しています。自分でお世話した花が部屋を飾る様子を見て、子どもたちも喜びを感じているようです。花の水切り、ぜひお家でもさせてあげてください。

 この他にもこいのぼりの共同制作や、キュウリやトマト、ピーマンなどの栽培、さらにはお友だちが持ってきてくれた昆虫をクラスで飼う試みなど、折にふれて子どもたちの意見を取り入れる活動を数多く組んでいます。共に援け合い学び合いながら多くのことを発見し、成長していく喜びを感じてくれるよう、これからも環境を整えていきたいと思います。
                  (園長 鬼木 昌之)
<園長だより「風」6月号>
2023年5月25日
 東海道、中山道、日光街道……、江戸時代、各地を結ぶ多くの街道が整備され、たくさんの人が行き交い、人々のつながりが深まりました。近代になると全国に国道が張り巡らされ、今では高速道路網が整備されて遠い所まで短時間で移動できるようになりました。さらに町の中には、県道・市道・そして小さな路地に至るまで人々の生活に欠かせない道が存在しています。昔も今も道は人々の営みの中で重要な役割を担っています。

 「道」という字は、十字路と立ち止まる足とが元になってできた「しんにょう」に「首」が組み合わさってできています。古代の人々は、多くの人が行き交う道を通って異民族の邪霊(じゃれい)などが入り込むのではないかと恐れていました。その災いを避けるために異族の首を手に持ち、その呪(のろ)いの力で邪霊を祓(はら)い清めようとしたのが「道」という文字の起源といわれています。単純に人々が通るだけではなく、道を通って種々雑多なものが移動するという認識からこの文字ができているようです。

 フランスの詩人ジャン・ド・ラ・フォンテーヌは「すべての道はローマに通ず」という格言を残しました。古代ローマ時代、ヨーロッパ各地から異なる道を通ったとしても必ずローマに到達することができたということから、出発点や手段は違っていても目的が同じなら同じ場所や結論に達すること、あるいは、あらゆる物事は一つの真理から発していることのたとえとして用いられます。また、日本では「茶の湯」「剣術」「柔術」などでも、その技や精神を極めることを通して高みに至ることをめざし「茶道」「剣道」「柔道」という「道」が生まれました。このように「道」ということばは、人々が通る場所を示すだけではなく、人々の精神世界にまで入り込んでいます。

 「僕の前に道はない 僕の後ろに道は出来る」

高村光太郎(1883~1956)の「道程」という詩の一節です。自らの進む道は自分の力で切り拓いていく、その歩みが「人生」という一本の道となるのだという思いを表現しているとのこと。自分の人生は他の誰でもない、自らの力で歩んで行こうという気概(きがい)を示した詩になっています。

 「道」は聖書の中にも記されています。

「主はこう言われる。『さまざまな道に立って、眺めよ。昔からの道に問いかけてみよ。 どれが、幸いに至る道か、と。その道を歩み、魂に安らぎを得よ。』」(エレミヤ書6章16)

多くの道がある中で、自分はどのような道を歩いているのか、その道は正しい道なのかを振り返ってみようと呼びかけられています。

 さらにイエスさまは

「わたしは道であり、真理であり、命である。だれでもわたしによらないでは、父のみもとに行くことはできない。」(ヨハネ福音書14章6)

と、イエスさまの道を歩むようにと教えてくださいました。そのイエスさまの道は、「わたしがあなたがたを愛したように、あなたがたも互いに愛し合いなさい。」(ヨハネ福音書13章34)という教えに集約されています。

 みなさんが歩んできた跡にはどのような道ができているのでしょう。その道はローマ(真理)に真っすぐに向かっている道でしょうか。それともあちらこちらに寄り道しつつ、ローマへと向かっているのでしょうか。時には迷路に迷い込んでいる時もあったかもしれませんね。でも安心してください。すべての道はローマにつながっています。少々回り道をしても、目標を失わなければ必ずローマに至ることができます。また、これから作り出していく「僕の前に」できる道が向かう先にある目標(ローマ)は、しっかりと見えているでしょうか。

 ちょっと立ち止まって、みなさんが歩んできた道、そして、これから歩もうとする道について考えみると、何か新たな気づきがあるのではないでしょうか。
                   (園長 鬼木 昌之)
<園長だより「風」 5月号>
世界を広げる本とのふれあい
2023年4月25日

 年少さんは「赤バッジ」年中さんは「桃バッジ」年長さんは「青バッジ」。天使幼稚園では学年ごとにバッジの色が決まっています。学年が上がり桃バッジや青バッジをつけた子どもたちは、誇らしげに新しいバッジを見せてくれます。「わたし、あおバッジさんだから、あかバッジさんのおせわができるの。」と報告してくれることも。子どもたちにとって、バッジの色は、自分の成長を感じることができるツールになっています。

 年少さんや年中さんの頃、なかなか新しい友だちの中に入っていくことができていなかった子が、年長さんになると、小さな子に気を留めてお世話をする姿がみられるようになったり、年中さんの頃まで我慢をすることがあまり得意でなかった子が、「それはだめでしょう。」と声をかけると、すっとやめることができるようになったりと、本人はあまり意識していなくても大きく成長している様子が見られるようになります。

 3歳から4歳、4歳から5歳、そして5歳から6歳になる1年間の成長は、29歳から30歳になる大人と比べると比較にならないほど大きなものです。人生の1/6年と1/30年、数字を見てもその差は歴然としていますね。体も脳も著しく成長している子どもたちにとっての1年間はとっても大きなものです。

 その一方、まだまだ経験が少ない子どもたちですから、環境を整えずに過ごさせていると、身の回りのわずかな情報しか受け取ることができず、大きく成長するきっかけを失ってしまいます。子どもたちの可能性を伸ばすためには、子どもの周りの環境を整えることが大切です。

 今年の春、慶應義塾大学法学部に入学したことが話題になった芦田愛菜さんは「両親は、私が小さい時からすごく身近に本を置いてくれていました。そういう環境を作ってくれたことに感謝してます。本が好きになったのは、いつもたくさん読み聞かせしてくれていたことが大きいと思います」「小さい頃から両親がたくさん本を選んできてくれたので、読書はすごく身近な存在でした。歯磨きとか、お風呂とかと同じような感じ」と語っていました。芦田さんは自身の経験の中で、読書が自分を大きく育ててくれる礎になったと伝えてくれています。

 本や絵本の中にはいろいろな世界が詰まっています。また、人として大切にしなくてはいけない教えを伝えてくれるものもあります。小さい頃の本・絵本との出会いは、その子の世界を大きく広げてくれるものです。

 「うちの子はあまり本を読みたがらなくて……。」という声も時々聞くことがあります。そこで役に立つのが「読み聞かせ」です。なかなか本を読みたがらない子、絵本を手にしようとしない子も、お家の方とふれあうのは嬉しい時間です。子どもとのスキンシップを図りながら読み聞かせをすることを通して、子どもに本との出会いの場を提供することも一つの方法です。また、恐竜の本やキャラクターが載っている本しか見ないなど、読む本や絵本が偏っている子どもにも読み聞かせが役に立ちます。お子さんが好きな本を読みつつ、合わせてその子があまり関心を示さない本を1冊はさむことを通して、その子の体験の幅を増やしてあげることができるのです。子どもの欲求に沿いつつ、意図的に必要なものを組み込んで子どもの成長を導いていく、それが子育てや教育活動のポイントでもあります。

 ご自身の著書「まなの本棚」の中で、芦田愛菜さんは「小さい時に目にしていたものも少し成長してから読み返してみると、全然印象が変わっている―――。小さな子供向けと思われる絵本も、大きくなってから読み返すと『あれ、こういうことだったんだ!』って、以前は見落としていた教訓やキーワードに気づくことも多いんです。」と記しています。善い本や絵本には、子どもだけではなく大人にとっても大切なメッセージが込められているもの。お子さんと一緒に、ぜひ多くの本や絵本とふれあい、世界を広げていってみてください。
                         (園長 鬼木 昌之)
<園長だより「風」 4月号>
援け合い・学び合い
2023年4月7日
 4月(April:卯月=うづき)を迎えました。月の名前のエイプリル(April)は、ギリシャ神話の愛と美の女神である「アフロディテ(Aphrodite)」から来ているという説と、気候も暖かくなり草木が芽吹く季節であるため、ラテン語の「開く」を意味する「アペリレ(aperire)」から来ているという説があります。和名の卯月という呼び方は、旧暦の4月(今の暦では5月頃にあたります)には、卯の花(ウツギ=アジサイ科ウツギ属の落葉低木で5月頃小さな白い花をつける)が咲くから、あるいは稲を植える月である「植月」からという説があるそうです。どちらの呼び方にも、日に日に暖かさが増し、草木が生い茂る季節に向かっていくという意味が込められています。

 新年度を迎え、フランソワ・エンジェルクラスそして幼稚園で新しい生活が始まる子どもたちや、1年進級してお兄さんお姉さんになったという自覚をもって年中さんや年長さんになった子どもたちも、これから草木が芽吹きすくすく育っていくように、多くの体験を積みながら、ぐんぐん成長する日が訪れようとしています。

 昨年度は「発見する喜び・成長する喜び」を目標に掲げ、一人ひとりの子どもたちが主体的に学ぶことができるような場を設定してきました。子どもたちは新しい体験をすると「おや?」「なんだろう?」「どうなっているのかな?」「どうすればいいのかな?」という疑問を持ち、それを解決する方法を見出したり、分かったり、出来たりすることを通して、喜びを感じ成長していくものです。昨年度はその環境を設けることを意識しつつ保育に取り組んできました。

 今年度は、この目標を継続しつつ、さらに子どもたち同士の交わりの中で、互いに高め合っていくことができるように「援け合い・学び合い」を目標に掲げました。

 国際化や情報技術の発達、さらには気候変動などで激しく変化していくことが予想されるこれからの時代を生きていく子どもたちには、多くの知識を持つこと以上に、その知識を用いて問題を解決する力が求められています。また地球を取り巻く様々な課題を解決するためには、一人だけの力ではなく、仲間と援け合い、力を合わせることが大切になっていきます。

 4月の初めに、この目標を達成できるようにするために、どのように取り組んでいこうかと先生たちの話し合いを行いました。

 〇 多くの経験を積む場を設けてあげたい(絵の具・粘土・折り紙・音楽・リトミック……)
 〇 自由選択の場を増やしてはどうか(遊びや制作の内容・1日の時間の使い方を含めて)
 〇 外部の方に来ていただいて、体験の場を増やしてはどうか(ゲストティーチャー)
 〇 モンテッソーリのおしごとの提供をもっと増やして多くの中から選べるようにしてはどうか
 〇 自分で目標を持って取り組む場を作ってはどうか(例:地図のおしごと・鉄棒 など)
 〇 制作の中で、クラスや学年での共同制作を増やしてはどうか
 〇 ルールのある遊びを教え、ルールに沿って遊ぶ楽しさを体験させたい
 〇 ボールを使って一人で遊ぶのではなく、一つのボールを使ってみんなで遊ぶことの楽しさを味わわせてあげたい
 〇 どんぐりや木の葉などを、一人で集めるだけではなく、みんなで共有して何かを作るような活動をしてはどうか
 〇 みんなで作物や花などを育てる活動を取り入れてはどうか

等、たくさんのアイディアが出てきています。天使幼稚園創立75周年を終え、新しい伝統を作っていくためにも、積極的にいろいろな活動にチャレンジしていきたいと考えています。

 さらなる成長を目指す天使幼稚園。今年度も、どうぞよろしくお願いいたします。
                         (園長 鬼木 昌之)
<園長だより>   <2016年度> <2017年度>  <2018年度>
 <2019年度> <2020年度> <2021年度> <2022年度>
<2023年度>
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