<2016年度> <2017年度> <2018年度> <2019年度>
<2020年度> <2021年度> <2022年度> <2023年度> |
<園長だより「風」 9月号> |
備えよ常に |
2024年9月25日 |
昨年に引き続き、今年も秋分の日の直前まで猛烈に暑い日が続きました。運動会の練習は暑さのために屋内で実施したり時間を短縮したりするなど、大きな影響を受けています。福岡県太宰府市では猛暑日が一か月以上続いて国内最長記録を更新し、関東ではスコールのような雨が連日降るなど、過去に経験したことがないような天候が続きました。さらに今年は、8月29日に九州に上陸しほぼ停滞していた台風10号の影響で、8月30日から3日間、東海道新幹線が計画運休を行い、多くの人々の足が奪われました。台風の影響でこれほど長く運休が続いたのは初めてのことでした。
8月8日には宮崎県で震度6弱の地震が起き「南海トラフ地震臨時情報」が出され、巨大地震の発生確率が平時より数倍高まったということで、地震への備えを今一度確認するようにと呼びかけられました。その情報によって、すぐにも地震が来るのではと心配になって、旅行を取りやめた人も多かったようです。またその呼びかけの影響で米の備蓄を急いだことが、その後の「令和の米不足」の一因となったのではとも言われています。
この他にも宮崎の地震翌日の8月9日には、神奈川県西部で起きた地震のため東京でも緊急地震速報のアラームが鳴り、驚かれた方も多かったのではないでしょうか。8月16日には関東に台風7号が近づいて大雨洪水警報が出され、天使幼稚園も預かり保育をお休みすることになりました。
こうして今年の夏を振り返ると、例年には見られない異常気象や天変地異に左右された日々が続いてきたことが分かります。
「備えよ常に(Be prepared)」という言葉があります。これは、ボーイスカウト・ガールスカウトのモットーで「いつなんどき、いかなる場所で、いかなることが起こった場合でも善処ができるように、常々準備を怠ることなかれ」という心構えを表しています。
2011年の東日本大震災後、建物の耐震工事をしたり、屋内の家具等の固定をしたり、食料品の備蓄をしたりと、地震に対する対策の充実が図られてきました。それから13年が経ち、地震への警戒心が薄れてきたときにやってきた宮崎の地震や今年初めの能登半島地震。改めて気を引き締め直すきっかけになりました。
「備えよ常に」というモットーは、地震に限らず、日々の様々な出来事への対応を図ることをわたしたちに教えてくれています。
「ハインリッヒの法則」というのがあります。1件の重大事故には29件の軽微な事故と300件のヒヤリハットが隠されているというもので「ヒヤリハットの法則」とも呼ばれます。日々の生活の中、事故にはならなかったけれど、ヒヤリとしたりハッとしたりすることが数多く起こるもの。その時に安全対策を講じることによって事故を未然に防いだり、何かあった時に迅速に対応できるように準備をしたりしておくことも大切な心掛けです。
みなさんの生活の中でこれはちょっと危ないなと感じたことや、おっと危ないと思ったことはありませんか。そのようなヒヤリハットをなおざりにするのではなく、危機が迫っているかもしれないと気を引き締め、それに備えていく事。異常気象や地震などの自然災害への対応と共に、日ごろのヒヤリハットを自らの行動の見直しにつなげ「いつなんどき、いかなる場所で、いかなることが起こった場合でも善処ができるように」準備をしておくことが、安心・安全な生活につながっていくのではないでしょうか。
(園長 鬼木 昌之)
|
<園長だより「風」 9月号> |
オノマトペで遊ぼう |
2024年9月2日 |
① 「がたがたがた」⇒ 「ぐらぐらぐら」⇒ 「どしん」⇒ 「どきどき」⇒ 「えーんえーん」 ⇒ 「ぎゅー」⇒ 「くすんくすん」 ⇒ 「なでなで」⇒ 「すやすや」
②「ぎー」⇒ 「そろそろ」⇒ 「きらきら」⇒ 「にこにこ」 ⇒ 「どんどんどん」 ⇒ 「びりびり」⇒ 「ぴょんぴょん」
ここに並べたのはオノマトペ。「擬態語」や「擬声語」と呼ばれるもので、様子や物音、声などを表しています。オノマトペを並べるだけでも、何となくその場の様子を思い浮かべることができますね。ちなみに①は、突然地震が起き、怖くて泣いてしまった子どもが、おうちの方に抱っこしてもらって安心した様子、②はクリスマスの朝、起きてきた子どもがドアを開けるとサンタさんからのプレゼントがあり、包装紙を破って手に取り大喜びしている様子をイメージしたものです。
世界の言語の中で、英語にはおよそ1,000~1,500、フランス語には600ほどのオノマトペがあると言われています。日本語には4,500ほどがあり、世界の言語の中でオノマトペが多い方だそうです。
オノマトペは漫画の中でも多く用いられています。「Dr.スランプ」に登場するアラレちゃんが走っているシーンでは「キーン」という音が鳴り響き、スピードを感じることができます。漫画の神さまと呼ばれる手塚治虫は、何も音がしない様子を「しーん」というオノマトペで表しました。以来、しーんと表すと静かな情景を想像することができるようになりました。
宮沢賢治の物語にはオノマトペがたくさん用いられています。「風がどうと吹いてきて、 草はざわざわ、木の葉はかさかさ、木はごとんごとんと鳴りました。」(注文の多い料理店)「天の川のひとつとこに大きなまっくらな孔が、どほんとあいているのです。その底がどれほど深いか、その奧に何があるか、いくら眼をこすってのぞいてもなんにも見えず、ただ眼がしんしんと痛むのでした。」(銀河鉄道の夜)その情景だけでなく、背景にある不気味さや不思議な感覚がオノマトペによって強調されています。
このように、オノマトペを上手に活用することで、その場の情景や心情を細やかに表現することができるものです。
幼稚園に通う子どもたちは、日々の生活の中で多くのことばを吸収しています。初めは意味が分からないことばも、繰り返し耳にするうちにその意味や使い方を身に着けています。その能力は大きく、親や先生が気付かないうちに多くの言語を獲得し、子どもの口から発せられたことばに、いつの間にそんな言葉を覚えたのと驚くことも多いものです。それだけの力を持っている子どもたちだからこそ、普段の生活の中では豊かな言語体験を持たせてあげたいものです。
子どもたちが好きなことば遊びに「しりとり」があります。年齢が上がるにつれ知っていることばが増えて長く続けることができるようになり、子どもたちも喜んで取り組んでいます。さらに、ことばを活用したり、ことばの裏に込められた思いや情景を思いめぐらす力を養うために、オノマトペを使ったことば遊びも楽しいものです。
「るんるんって、どんな気持ち?」「では、反対に悲しい気持ちはどんなことばがあるかな?」「ぐっしゃーてどんなときに使うかな?」「スイカを食べる時の音をいっぱい考えよう。」「今から言うことばに合わせて動いてごらん『ぎゅーんぎゅーん』『ぷるぷる』」「ねこが怒った時の声を出してみて。」などいろいろな遊び方があるものです。
教育の基本の一つは子どもたちの学びの環境を整えることです。子どもたちの感性を養い、コミュニケーション能力を高めるためにも、オノマトペを意識しながら子どもたちに多くのことばにふれる場を提供していけると良いですね。
(園長 鬼木 昌之)
|
<園長だより「風」 夏休み号> |
夏休み |
2024年7月19日 |
文明開化を通して欧米に負けない国にしようと取り組んでいた明治政府は、1872(明治5)年、日本にも学校制度を取り入れました。それから9年後の1881(明治14)、文部省は「夏季休業日」を設けて夏休み制度がスタートしました。日本の学校の夏休みは古くからあるものですね。夏に長い休みを取るのは、当時は教室にクーラーがなく、暑さのため勉強ができなかったから、あるいは欧米のvacances(バカンス:仏語) vacation(バケーション:英語)を参考にした等の説があるようです。
一方、大人にとっての夏休みは、江戸時代から昭和の初めにかけて行われていた、住み込みで働いていた奉公人が、お正月とお盆に実家に帰る「藪入(やぶい)り」の習慣がもとになっているといわれ、現在は8月13日の迎え火(盆入り)から、16日の送り火(盆明け)までを「お盆休み」としているところが多いようです。
欧米では大人も含めて、6月から8月にかけて長い夏休みをとる国がたくさんあります。vacancesには、「空(から)」という意味があり、ゆったりと過ごす「人間が元気に生きていくためには必要な時間」という思いがあり、長い期間避暑地に出かけて、のんびりとしたお休みを満喫している人も多いそうです。
日本の学校では、長い間7月21日から8月31日までが夏休みになっていました。小学校では「夏休みの友」が配られ、毎日1ページずつ進めていくはずが、夏休みの終わりになって大急ぎで残っているページに取り組んだという経験をされた方も多いのではないでしょうか。ところが、文部科学省の指導要領の改定に伴って「脱ゆとり」が図られるようになり、授業時間を確保するために、夏休みの期間を短縮する学校も増えてきました。また、夏休みの宿題も、画一的なものから、個別の課題になったり、宿題自体を無くしたりする学校もみられるようになってきました。
まとまったお休みを取ることができる夏休み期間は、故郷に帰省したり、海外を含めて旅行に出かけたりと、日々の生活から離れることができる貴重な時間です。ただ、ほとんどの人がこの短い期間にお休みを取るために、列車などは込み合い、道路は渋滞するなど、vacances「空」とは程遠いお休みとなっていますね。
モンテッソーリ教育を取り入れている天使幼稚園。その基本は「子どもには自己教育力」があるという考え方です。そのために、それぞれのお部屋には「日常」「感覚」「言語」「数」「文化」という多様な教具をそろえ、子どもたち一人ひとりが自分の思いを活かし、おしごとを選ぶ環境を整えています。でも、モンテッソーリのおしごとは、これらの教具を使うことに留まりません。子どもたちは自分がしたいことを見つけると、大人が導かなくても集中して取り組み、できるまで繰り返しチャレンジするという特性を持っています。天使幼稚園では、子どもたちの多様な興味関心を引き出すことができるよう、モンテッソーリの教具を使う場だけでなく、思い切り体を動かして遊ぶ時間も大切にしたり、最近では絵の具遊びや泥んこ遊びの場、そして音楽教室を設けたりして、子どもたちの持つ多様な可能性を伸ばす環境を整えるようにしています。
日ごろとは異なる環境で過ごすことができる夏休み。子どもたちは、いつもはできないことを体験する絶好のチャンスです。それぞれのご家庭でも、子どもたちが挑戦できる多くの環境を整えることによって、今までは気付かなかった新しい可能性を見つけ出すきっかけにすることができるもの。多くの才能を秘めた子どもたちだからこそ、一人ひとりの奥に眠っている、生涯取り組む事ができるものを見つけ出す場がとても大切です。それは生き物や自然とのふれ合いだったり、音楽であったり、ダンスやスポーツであったり、本との出会いであったり……。こうして夏休みに出会った経験が、大谷翔平選手や、藤井聡太名人のようなすばらしい活躍をする人になるきっかけになるかもしれません。
のんびりと過ごす中、多くの経験をすることができる場を準備し、楽しい夏休みをお過ごしください。
(園長 鬼木 昌之) |
<園長だより「風」 7月号> |
花もいろいろ
~関心を持って調べる力~ |
2024年6月24日 |
今年も梅雨の季節がやってきました。梅雨といえばアジサイ(紫陽花)。あちらこちらで、紫やピンク色の花が咲き誇っています。こんもりと咲いたアジサイの花。でも、花のように見える部分は、実は花ではなく、「装飾花」といって「額」が変化したものです。その装飾花をかき分けてみると、ひっそりと咲いている「真花」を見つけることができます。そこには小さなおしべやめしべ花びらがついています。このアジサイの名前は、「藍色が集まったもの」を意味する「あづさい(集真藍)」から来たとする説が有力とのこと。「紫陽花」の文字は、中国で紫色の花を咲かせる花を「紫陽花」と呼んでいたことから、日本に咲く紫色のこの花を「紫陽花」と名付けたとされています。
この時期にはアジサイだけではなく、ユリ(百合)やカンナの花もあちらこちらで見ることができます。
ユリは6枚の花びらがあるように見えますが、外側の3枚はがく片で「外花被(がいかひ)」と呼び、内側の3枚が「内花被(ないかひ)」と呼ぶ花びらです。ユリという名前は、茎が長く風が吹くとゆらゆらと揺れる様子から名づけられ、「百合」という漢字は球根の鱗片がたくさん重なっているところからきているとのこと。
カンナの花を観察すると不思議な形をしています。花びらのように見えるのは、雄しべが変形したもので、その中の一番内側の1本だけが花粉をつけるそうです。カンナという名前は茎が筒状になっていることから、古代ケルト語の杖を意味する「Cana」から、あるいは同じように筒状の茎を持つ葦を意味するラテン語の「Canna」からきているという説などがあるそうです。
「花の絵を描いて」と言われたとき、みなさんだったらどんな花を描くでしょうか。一般的にはキクの花のように中心におしべとめしべがあり、たくさんの花びらがその周りを囲んでいる花や、チューリップのような地面から茎を出しその脇から葉が伸び、一番上に花が咲いているものを描くことが多いのではないでしょうか。でもひとことで花といっても、このように多くの形状の花があふれています。ただ、この2つの花以外の絵を描くのは難しそうですね……。
昨年、NHKの連続テレビ小説「らんまん」で取り上げられた牧野富太郎博士は、1928(昭和3)年、雑誌の取材で、記者が「雑草」という言葉を口にした時、「きみ、世の中に〝雑草〟という草は無い。どんな草にだって、ちゃんと名前がついている。わたしは雑木林(ぞうきばやし)という言葉がキライだ。松、杉、楢(なら)、楓(かえで)、櫟(くぬぎ)——みんなそれぞれ固有名詞が付いている。」と話されたそうです。また、1965(昭和40)年頃、生物分類学をテーマとして研究していた昭和天皇は、庭の手入れをした職員が「雑草が茂ってまいりましたので、お刈りいたしました。」と報告をした時、「雑草ということはない。どんな植物でも、みな名前があって、それぞれ自分の好きな場所で生を営んでいる」と注意なさったというエピソードも残っています。
日々何気なく眺めている草花ですが、このように様々な形状を持ち、さらに一つひとつ名前を持っているのです。何も知らずに興味や関心を持たずに過ごすのではなく、身近な草花を注意深く観察し、「何だろう?」「なぜ?」「どうして?」という疑問を持ち、その問題を解決しようとする姿勢。それが、これから育ちゆく子どもたちにとって欠かせない、学びの原動力となるものです。
登降園時、あるいは日々の生活の中で、草花や樹木を細やかに眺め、その特徴を他の草花と比べてみたり、名前を調べたりできると良いですね。さらに草木だけではなく、生き物や町の様子などに関心を広げていくことを通して、「自ら伸びる力」を育んでいくことができればと願っています。
(園長 鬼木 昌之)
|
<園長だより「風」 6月号> |
匂いの記憶・匂いの力 |
2024年5月24日 |
先々週は母の日の集い、先週は親子遠足、そして今週は保育参観に足をお運びくださり、ありがとうございました。お家の方と一緒に過ごす子どもたちの嬉しそうな笑顔。コロナが5類に移行されてから2回目の春。こうしたふれあいの時間を普通に持つことができることの恵みを、改めて感じているところです。
♪ おか~さん な~に おかあさんって いいにおい
せんたくしていた においでしょう しゃぼんのあわの においでしょう♪
(作詞:田中ナナ / 作曲:中田喜直)
母の日の集いで子どもたちがプレゼントした「おかあさん」の歌。1954(昭和29)年に発表され、今でも歌い継がれているこの曲の作詞者田中ナナさんが、この詩を作るきっかけを次のように語っておられます。
田中さんの妹さんが、ご主人の仕事の関係で、幼い娘ルビーちゃんをおばあちゃんに預けてフランスに渡りました。1年後に帰国したお母さんに会ったルビーちゃん。でも、お母さんの顔を忘れていて、おばあちゃんにしがみついてしまいました。その時、おばあちゃんが優しく「ほらママよー。いいにおいがするでしょう。」と声をかけると、ほのかなママの香りをかいだルビーちゃんが「ママ!」と笑顔になってママに飛びついたそうです。「においが結ぶ親子の絆。そのすごさを、歌で伝えたかったんです」と。<朝日新聞2010(平成22)年1月1日号より>
生き物にとって、匂いは生死がかかった大切な情報です。花は香りを漂わせ、昆虫たちを引きつけて花粉を運んでもらいます。世界で一番大きい花として知られ、神代植物公園にもあるショクダイオオコンニャクは、腐った肉のような強烈な悪臭を出して虫を呼んでいます。芳香であれ悪臭であれ、それぞれの植物に必要な虫を、その匂いで誘っています。動物も、くだものやエサになる生き物の匂いを嗅ぎつけて、食べ物を得たり獲物を探したり、反対に敵から逃れることができたりしています。私たち人間も、今は食品の安全性が厳格に管理され、賞味期限や消費期限が定められていますが、かつては食べ物の匂いを嗅いで、腐った臭い、酸っぱい臭いがするものは食べられないけれど、そうでなければ食べられると判断していました。
最近では匂いによる癒しの効果が、大きく認識されるようになりました。私たちは日ごろ視覚や聴覚から得られる情報を、大脳新皮質を使って考えたり判断したりしています。しかし、嗅覚の情報は、感情や直感に関わる大脳辺縁系にダイレクトに届きます。さらにその情報は脳の視床下部に伝わり、人間の生理的な活動をコントロールする自律神経系・ホルモン系・免疫系に影響を与えます。その効果に目を付けたのが、エッシェンシャルオイル(精油)を活用したアロマセラピー(英)<アロマテラピー(仏)>で、リラクゼーションを与えたり、病気の治療や症状の緩和に利用されたりしています。
目で見ることができる視覚情報は、写真やビデオで記録し、繰り返し見ることができ、耳で聞く聴覚情報も、同じビデオや録音機器によって残すことが可能です。でも、嗅覚情報である匂いや香り、触った時に感じる触覚情報、そして舌で味わう味覚情報は、現在のところ、記録しいつでも確かめることはできないものです。
再現が難しい嗅覚情報だけに、意識していないとつい忘れがちになってしまいます。さらに、人は同じ匂いを嗅ぎ続けると、だんだん慣れて、匂いを感じにくくなるという傾向があります。でも、わたしたちの身の回りにはたくさんの匂いがあふれています。花の香り、雨が降り始めた時の独特の香り、登降園時に通る街の匂い、お料理しているときのお家の匂い、さらには毎日通っている幼稚園の匂い、等々。時々嗅覚を研ぎ澄まし、身の回りの匂いを感じてみませんか。何か懐かしさを感じたり、感情が動かされたりする体験ができるのではないでしょうか。
(園長 鬼木 昌之)
|
<園長だより「風」 5月号> |
共に歩む |
2024年4月24日 |
53人(年少51人・年中1人・年長1人)の新しい園児を迎えて2024年度がスタートしました。朝、お家の方から離れる時に「ママがいい~」と淋しくなってしまっていた年少さんも、お弁当を食べるころには、ニコニコ笑顔が見られるようになっています。昨年度仲が良かった友だちと別々のクラスになって、ちょっぴり残念そうにしていた年中さんや年長さんも、新しいクラスの中で、親しい友だちができ始めています。社会の中でも天使幼稚園でも、新しい出会いが生まれている新年度です。
♪ いちねんせいに なったら いちねんせいに なったら ともだちひゃくにん できるかな ♪(「いちねんせいになったら」作詞:まどみちお / 作曲:山本直純)
小学校に入学する子どもたちの思いを歌ったこの曲にも表れているように、新しい環境に飛び込む時に心配なことの一つが、どんな人がいるのかな? 新しい人たちと馴染むことができるかな? 出会った人たちと仲良くできるかな? という、人との出会いに関することです。家族という親しい人だけの中で育ってきた、幼稚園に入った子どもたちにとって、見ず知らずの大勢の人との出会いは、大人が感じるよりも、もっと大きな壁になるものです。でも、その壁を乗り越えて、時にはぶつかったり、時には助けられたり助けたりしながら、友だちとのより良い関係を築いていくことが、人としての成長につながっていきます。
その出会いや交わりの中で、子どもたちの心の中に大切に育てていきたいのが「共に歩む」という思いです。周りの人から多くの手助けをしてもらいながら成長してきた子どもたちは、幼稚園という社会に飛び込み、してもらうだけではなく、自分も人のために何かをしてあげることができるという体験を重ねていきます。
♪ 喜びが 大きくったって 自分だけなら 喜びはただひとつ 増やせはしない
喜びは みんな一緒に 味わうものさ 喜びを分け合って 大きくしよう
なんにもなくても 嬉しいこころ みんなで生きてる 楽しいこころ
苦しみが 大きくったって 心配せずに 苦しみはみんなで 乗り越えようよ
苦しみに 友よその手を貸してあげよう 苦しみを分け合って 小さくしよう
なんにもなくても 嬉しいこころ みんなで生きてる 楽しいこころ ♪
(「嬉しいこころ楽しいこころ」末吉良次 / フランシスコ会のブラザー)
自分の思いを強く主張する「イヤイヤ期」を乗り越えてきた子どもたち。いつでも自分の思い通りにすることはできないということを学んだり、自分を援けてくれる人がいることに気付いたり、周りの人のために何かしてあげることに喜びを感じたりしながら、新しい人間関係を築いています。
ただ、日々の生活の中、子どもたちは何となくそのことを感じてはいても、理解するところまで昇華できずにいるものです。このような体験があった時に、「嬉しいことをみんなで一緒にお祝いすると、もっと嬉しくなるね。」と喜びの共有に気付かせることや、悲しい思いをしている人や困った人を助けた時、相手の重荷が軽くなったことを伝えることを通して、子どもたちに「共に歩む」ことの意味を教えることができるもの。その役目を担っているのが、保護者の皆さんや幼稚園の先生、そして周りにいる大人たちです。
身近な幼稚園の友だちとのふれ合いの中で、「共に歩む」ことの大切さや喜びを学んだ子どもたちが、やがて地域に目を向け、地域の方々と「共に歩む」ことを始め、その視線を国内、そして世界へと向けていき、世界中のだれとでも「共に歩む」世界を築いていってほしいと願っています。
見よ、兄弟が共に座っている なんという恵み、なんという喜び。(詩編133-1)
(園長 鬼木 昌之) |
<園長だより「風」 4月号> |
自ら伸びる力を育む |
2024年4月8日 |
コロナによる制約がなくなって初めて迎える新年度のスタート。テレビのニュースでは、新入社員が一堂に会した入社式や、大勢が集まって会食をするお花見の様子が伝えられていました。天使幼稚園でも、年間行事や諸活動の計画をコロナの心配をせずに立てることができるようになりました。ただ、コロナ対策が必要な期間中、今まで通りにできないことが増えたことは不自由であったものの、それぞれの行事や活動のねらいを振り返り、何のためにしているのか、そのねらいを達成するためにはどうするかを考える良いきっかけともなりました。
コロナの感染者が多かった一昨年度は、子どもの内面に目を向け「発見する喜び・成長する喜び」という目標を掲げ、5類に移行されることが決まった昨年度は、それまで十分にできなかった子どもたちの交わりを深めるために「援け合い・学び合い」という目標を立てて園生活に取り組んできました。新年度を迎えるにあたり、その成果を確認するため、職員でこれまでのあゆみの振り返ってみました。
クラスで一緒に野菜や花を育て、水やりをしたりその成長を見守ったりする中、自然に目を向ける子どもたちが増えてきました。その子どもたちの興味関心をさらに高めることができるよう、園内の樹木や花に名前を記すことにも取り組んでいます。野菜が苦手な子どもが自分で育てたミニトマトをかじってみる姿も見られました。カマキリを飼ったクラスでは、カマキリが生きていくために、小さな生きている虫が食べられて死んでしまい、カマキリの体の一部になることを通して、食の意味や生命の尊さなどを学んでいました。また、砂遊びのルールを見直し、砂を運び出したり水を使ったりすることができるようにした結果、泥だんごを作って遊んだり、砂や草花を使ってお店屋さんごっこをしたりと、遊びの範囲が広がり、さらに水道から水を運ぶ人、砂を掘る人など、役割を分担しながら援け合う姿も多く見られるようになりました。
年長さんを中心に、話し合いの場も多く設けました。5月のこいのぼりの共同制作の頃は、まだまだ先生のリードが必要だったものの、3学期のお店屋さんごっこの商品作りの話し合いでは、一緒に作る年少さんのことを考え「これならできる」「これは難しい?」と小さい人への配慮もできるようになっていきました。初めのころ自分の意見を押し通しがちだった子が、周りの意見を聞いてまとめ役ができるようになるといった成長もみられました。
さらに音楽教室や絵の具遊び、ハロウィンパーティーを取り入れたり、モンテッソーリのおしごとの提供を増やしたりと、子どもたちが多様な活動の中で、それぞれの持っている力を伸ばすことができるようにしてきました。
こうして子どもたちの主体性を育んできた2年間のあゆみをベースに、今年は「自ら伸びる力を育む」ことを目標に掲げました。
モンテッソーリ教育の基本は「子どもには自己教育力がある」という考え方です。子どもたちは、周りの環境に刺激を受け、いろいろなことができるようになっていきます。言葉にしても日々生活をする中で「どこでその言葉を覚えたの?」と周りの大人がびっくりするということもよく体験するものです。ただ、子どもが自由気ままに過ごしていても、自ら伸びることにつながるということではありません。そのために必要なことが、周りの環境を整えることです。子どもたちが、変化が激しい未来を生きるために必要な力は何か、そしてその力を養うためにどのような環境で過ごすことが好ましいのか、それを見極め準備するのが周りにいる大人に与えられた課題なのです。
この1年間、子どもたちに必要な力を伸ばすための環境作りを工夫して行事や活動に取り組み、一人ひとりの伸びる力を養っていきたいと思います。そのためには、保護者の皆様方のご協力も欠かすことができません。保護者の皆様と幼稚園とが一緒になって子どもたちの成長を育むことができるよう、今年度もどうぞよろしくお願いしたします。
(園長 鬼木 昌之)
|
<2016年度> <2017年度> <2018年度> <2019年度>
<2020年度> <2021年度> <2022年度> <2023年度> |